「困っているんだもん」 北海道の過疎地に出店するセコマの経営理念

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地元の買い物客が多く訪れるセイコーマート初山別店=北海道初山別村で2022年10月28日午後3時11分、谷口拓未撮影
地元の買い物客が多く訪れるセイコーマート初山別店=北海道初山別村で2022年10月28日午後3時11分、谷口拓未撮影

 過疎地に出店するコンビニエンスストアがある。北海道を中心にセイコーマートを展開するセコマ(本社・札幌市)だ。「逆張りの出店戦略」という声も聞こえてくる。だが、背景をひもとくと、「大手」のコンビニにできない面積の広い北海道に根を張るセコマだからこその「思い」があった。【谷口拓未】

 北海道を中心に展開するセイコーマートは道内の179市町村のうち174市町村に1084(2022年9月末現在)の店を構える。日本生産性本部サービス産業生産性協議会が実施する顧客満足度指数をみると、コンビニエンスストア部門で22年度まで7年度連続でトップを走り続けている。全国展開の大手との違いは何か。いち早く低価格の「一人用」のおかずを提供し、店内調理の食品を強化した。だが、それだけが、愛されている理由というわけでない。

 顧客の心をつかんでいるのは経営方針の独自性。その一つが過疎地への出店だ。約8年前に実現した人口1000人余の初山別(しょさんべつ)村への出店(14年)は地元からも驚きをもって受け止められた。店の周辺に3000人程度の「商圏人口」があることが、コンビニエンスストアを出店する目安とされている。採算が合わないように思われたからだ。

 セコマの丸谷智保会長は当時を振り返り、「報道機関は『逆張りの出店戦略』みたいなことを伝えたね。けれど、逆張りなどはないし、戦略的にみると、出店しない方がよい。過疎地戦略などがあるわけないよ。大変だからさ」と笑う。では、なぜ、店を出したのか――。理由は明快だった。「(住民が)困っているんだもん」

 「一度、行ってみたら」と言われた。なので、札幌市から北方に200キロ、車で約3時間の初山別村へと向かった。高速道路を経由し、日本海側の留萌市から北上。荒波が岸に打ち寄せる国道沿いに集落や風車、道の駅が点在し、人けのないバス停がある。鉄路はない。初山別村は日本海のかなたに利尻富士を望む漁業と農業が盛んな地域だった。

 村の公式ホームページに「ご存じのとおり、北海道の北のはずれにあります」とある。人口は1955年の5640人がピーク。現在は1077人という。65歳以上が総人口に占める高齢化率は38・44%に上る。住民は主に村役場のある地域で暮らす。だが、平日の日中に出歩く人はほとんど見かけなかった。

 オレンジ色のロゴが映えるセイコーマートは村役場の目と鼻の先にあった。日中は駐車場が埋まり、ここだけは続々と客が訪れている。殺到するのも無理はない。最も近い小売店は村中心部から約5キロ北にある農協が展開するスーパー業態の「Aコープ」。コンビニとなると、南に隣接する羽幌町までは約10キロだ。バスは1時間に1本もない。冬は周辺が通行止めになるほどの猛吹雪も珍しくない。

 村内で夫と暮らしている女性(86)は「運転はできないから助かっている。ご飯の支度をしていて『もうひと品』となる時もある。足が悪い人もいるから、大切なお店。急に誰かの車で買い物に行くこともできないからね」と話し、弁当を片手に店を出て歩いて帰宅した。セイコーマートは村の「ライフライン」の一つになっている。

個人商店閉店…役場とセコマの着地点

 集落から店がなくなる――。村内に激震が走ったのは2014年ごろのことだった。日用品や食品を扱っていた「よろず屋」のような個人商店の閉店が決定。かつては数十もの店が軒を連ねたという役場の周辺で買い物ができないという事態が現実化した。

 初山別村企画振興室の山崎英樹室長は「高齢者を中心に『買い物難民』が生じてしまうという危機感が高まった。交通弱者にとっては死活問題だった」と振り返る。村内の酒場で「コンビニでもやるか」「もうかるのか」といった冗談交じりのやり取りも繰り広げられた。山崎室長は「どうすることもできないのか」と思った。

 危機的な状況を受け、村役場は過疎地に数多くの出店の実績があるセコマに出店を要請した。…

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