「金利のない世界」に慣れた日本の弊害 黒田・日銀が怠った出口論
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日本を成長軌道に乗せるには、異次元の金融緩和だけでは無理がある――。日銀の黒田東彦総裁が約10年にわたって続ける大規模な金融緩和について、元日銀職員でもある日本総合研究所の翁百合理事長はこう指摘する。日銀の金融政策が抱える課題とは?【聞き手・杉山雄飛】
日銀の姿勢「円売りを助長」
――消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は4月から6カ月連続で政府・日銀の物価上昇目標である2%を上回っていますが、日銀は大規模緩和を続けています。対応は適切でしょうか。
◆現時点は確かに大幅に金利を引き上げる局面ではないと思います。足元の物価上昇も原材料価格などコストの高騰が原因のため、ただちに金融引き締めに転換すべきではないという日銀の主張は理解はできます。ただ、日銀の硬直的な政策運営方針の発信が為替相場で円売り・ドル買いを招くなどさまざまなマイナスの影響を広げているのも確かであり、改善の余地は大きいと考えています。
――「硬直的」とは、どういうことですか。
◆例えば、日銀は長期金利の指標となる10年物国債の利回りを上限0・25%に抑えていますが、4月以降は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」をすべての営業日で実施しています。緩和維持をさらに強く発信しようとしたのは明らかです。米連邦準備制度理事会(FRB)など海外の中央銀行がインフレ(物価上昇)抑制のため一斉に金融引き締めにかじを切る中、政策を変えないことを強調する日銀の姿勢が投資家の円売りを助長している側面があります。
「2%目標」国民の共感得られない
――政府・日銀は賃上げを伴う持続的な2%の物価上昇目標を掲げています。適切でしょうか。
◆「何としても2%を達成しないといけない」と物価目標を掲げ続けています。現在も賃上げは物価目標実現の手段という位置づけであり、国民の共感を得られているとは考えにくいです。2%という物価目標自体が適切か常に検討していく姿勢が必要です。経済の実態に合わせた柔軟な長期的目標の在り方を考えるべきではないでしょうか。
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