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米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が短文投稿サイト「ツイッター」を買収した。改革を進めながら「言論の自由を守る」と高らかに宣言するマスク氏に対して懐疑的な見方は多い。青い鳥はどこに向かうのか。行き先を探る上で、4年前の舌禍事件が一つのポイントになりそうだ。
紆余(うよ)曲折の買収劇
マスク氏の買収計画が明らかになったのは、4月のことだった。ツイッター経営陣は、買収防衛策の導入を発表するなど抵抗の姿勢を見せたものの、交渉の末、約440億ドル(約6兆1000億円)で買収に応じることで合意した。
ところが5月、マスク氏は買収手続きの保留を表明。7月には手続きの打ち切りを一方的に通告した。契約を破棄されたツイッター側は買収の実行を求めて米東部デラウェア州の裁判所に提訴する事態になった。
法廷審理の開始が目前に迫るとマスク氏は態度を変えた。裁判を停止すれば契約通り買収する意向を示したことで、10月27日、買収の手続きが完了した。
マスク氏はツイッターのCEOに就任し、次々と改革に着手している。取締役9人を全員解任し、従業員も約半数を解雇したとみられる。政府機関や大手メディアのアカウントに「公式ラベル」を付与する仕組みを導入したものの、すぐに撤回するなど混乱は続いている。
まずは経営優先か
ツイッターはどう変わるのだろうか。「新たなCEOとして、まずは利益を出せる体質に変えることが一番の課題です。コンテンツ管理では当面、急激な変化は起きないのではないでしょうか」と分析するのは、ソーシャルメディアに詳しい桜美林大の平和博教授だ。
実際にサービスを利用している日間アクティブユーザー数が全世界で2億人超のITプラットフォーマーだが、過去10年のうち8年が赤字だ。マスク氏も「1日あたり400万ドルを超す損失を出している」と述べており、CEOとして、まずは、その立て直しが急務になるという指摘だ。
ただ、肝心の広告を巡って企業が出稿を見合わせる動きが急速に広がっている。「言論の自由」を掲げるマスク氏がCEOに就任したことで、ヘイトスピーチ(憎悪表現)やフェイクニュースが増加するのでは、との懸念が高まっているためだ。米調査機関「ネットワーク感染研究所」の分析では、買収が成立した10月27日夜からの12時間で、ツイッター上では黒人差別の表現(Nワード)が6倍近くに増加したという。
マスク氏がリストラを断行し、ヘイトやフェイク対策にあたる投稿管理部門の人員を削減したことにも、企業側は懸念を膨らませている。問題投稿の増加を懸念し、人権擁護団体は広告出稿を見合わせるよう企業に働き掛けている。
こうした状況に対し、マスク氏は買収当日の朝、「ツイッターを何でもありの地獄絵図にすることはあり得ない」と表明。規制のあり方を協議する評議会を設置する方針を示した。一方で、11月4日には「活動家グループが広告主に圧力をかけているため、収益が大幅に減少している。コンテンツ管理は何も変わっていないのに」などとツイートし、不満を示した。
マスク氏は収益を広告に依存している現在のビジネスモデルを転換し、課金の拡大を目指すという。平教授は「長期的には投稿の規制を緩やかにしていくことも考えられます。でも、投稿の規制を急激に緩めれば、ユーザー離れや、ブランドイメージの毀損(きそん)を恐れて、広告出稿見合わせの動きが加速するかもしれない。このため今、急ハンドルを切ると、デメリットの方が大きいのではないでしょうか」と分析する。
誰のための「言論の自由」か
ツイッターのロゴとなっている青い鳥は、自由や希望を意味しているという。では、マスク氏が掲げる「言論の自由」とは何なのか。…
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