憎しみの連鎖は絶てるのか 日本人虐殺「通州事件」をどう見る

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仮埋葬された通州事件の犠牲者たち=1937年8月4日撮影
仮埋葬された通州事件の犠牲者たち=1937年8月4日撮影

 「通州事件」をご存じだろうか。日中戦争開始直後の1937年7月、中国人が日本人居留者らを殺害した事件である。この事件について、日本軍が多くの中国軍民を殺害するなどした「南京大虐殺」(南京事件)研究の第一人者で都留文科大名誉教授の笠原十九司さん(78)が今夏、遺族への聞き取りを基に著書「通州事件 憎しみの連鎖を絶つ」(高文研)にまとめた。二つの虐殺事件から何が見えるのか。笠原さんに聞いた。【聞き手・吉井理記】

 ――「通州事件」は37年7月29日、日本が中国北部(華北)を影響下に置くために樹立させた傀儡(かいらい)政権「冀東(きとう)防共自治政府」(冀東政権)の保安隊の中国人が反乱を起こし、北平(現在の北京)の東にあった都市・通州の日本軍守備隊や日本人、朝鮮人の居留民ら二百数十人を虐殺した事件です。なぜこの事件を?

 ◆2017年に「日中戦争全史」(高文研)を出したのですが、通州事件で父母と2歳の末妹を失った遺族の櫛渕久子さん(94)が本を読み、手紙を書いてくれたことがきっかけです。久子さんの次妹の鈴木節子さん(89)にも聞き取りを重ね、資料を集めて事件の全容を明らかにしました。姉妹の「憎悪の連鎖から平和は生まれない」という思いに打たれたのです。

 ――「憎悪の連鎖」とは何か、後で詳しく聞くとして、事件が起きた原因は何でしょうか。

 ◆いくつかの理由があります。…

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