「なぜ眠るのか」謎の解明へ 遠い道のりに挑むトップランナー
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神経系を持つ全ての動物は眠る。ヒトは人生の3分の1を眠って過ごすが、睡眠のメカニズムはよく分かっていなかった。「なぜ眠るのか」、その根源的な謎の解明に、世界でもトップランナーの日本人研究者が挑んでいる。
「眠気のもと」が起きている間に徐々にたまり、眠ると時間をかけて減っていく。睡眠と覚醒が切り替わるのに、わずか数秒しかかからない。このスイッチの役割をする一つが、1998年に筑波大の柳沢正史教授が発見したオレキシンという物質だ。
オレキシンは、生理機能をつかさどる脳の中枢「視床下部」にある。視床下部には覚醒中枢と睡眠中枢があり、互いに抑制し合っている。覚醒時はオレキシンが覚醒中枢を活性化する。逆に、睡眠時は睡眠中枢がオレキシンを抑制する。中間状態はなく、必ずどちらかの状態を取る。
一方で「眠気のもと」は何なのか、蓄積具合がどう脳に伝わるのか、そもそも睡眠の役割とは何かなど、まだ分かっていないことは多い。
この謎を解くため、柳沢さんが2011年に始めたのが、あえて仮説を立てずに大量のマウスを使って探索する研究だ。
遺伝学の主流は、ある遺伝子が原因だとする仮説を立て、それを改変してどんな症状が起きるかを調べる。しかし柳沢さんの研究は逆で、遺伝性のある症状をもとに原因の遺伝子を突き止める、フォワードジェネティクスと呼ばれる手法だ。
なぜ仮説を立てないのか。
柳沢さんは、…
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