連載

余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

連載一覧

余録

「翻訳とは言葉だけではなく、文化全体を理解する仕事…

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 「翻訳とは言葉だけではなく、文化全体を理解する仕事」といわれる。初対面の国の交渉で食い違いが生じるのは必然だろう。幕末のペリー来航で結ばれた日米和親条約も英文と和文の内容が一部異なる▲領事赴任に必要なのは双方の合意(和文)か、一方の都合(英文)か。批准書交換の期限は18カ月後(和文)か18カ月以内(英文)か。「開国」への思惑の違いも影響したのだろう▲こちらは日米の野球規則の違いである。日本ハム新球場のファウルグラウンドの距離が日本の野球規則で「必要とする」約18メートルより短いと指摘された。米国では「推奨される」という規定で、臨場感を重視する大リーグ球場の多くが守っていないという▲規則は米国で作られ、日本で独自に訳されている。どこで差異が生じたのかは不明だが、何事もきっちりと決めたい日本と、アバウトさを許容する米国との違いもうかがえる▲四半世紀前に交流で来日したプロ野球の米国審判員が判定に抗議され、短期間で帰国したことがある。規則は同じでも米国は外角に甘い。一方、日本では規則で許されないはずの選手の抗議が日常的で「文化摩擦」が起きた▲今はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開かれ、大リーグで活躍する選手も増えた。違いを認識して交流が進む時代である。来季は特例で使用を許可し、その後改修工事を行うそうだが、結論を急ぐのもどうか。観戦の臨場感がどう変わるかを見定めてから規則の妥当性を判断しても遅くない。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集