事故の再現動画、裁判で証拠採用 遺族が独学で作成 那須雪崩事故

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事故の状況を知ってもらおうと、ソフトを使い3DCGを作成した奥勝さん=栃木県内で2022年11月10日午後8時43分、渡辺佳奈子撮影 拡大
事故の状況を知ってもらおうと、ソフトを使い3DCGを作成した奥勝さん=栃木県内で2022年11月10日午後8時43分、渡辺佳奈子撮影

 栃木県那須町の茶臼岳で2017年3月、県立大田原高校の生徒ら計8人が死亡した雪崩事故で長男の公輝さん(当時16歳)を亡くした奥勝さん(51)が、3DCGソフトを使って事故当時の様子を再現した動画を作成した。「事故について理解してくれる人が増えてほしい」との思いから、独学でソフトを学び、当時の状況を一目でわかるように再現。16日までに宇都宮地裁に提出した。

 裁判では、雪崩の予見可能性が主な争点となっている。県の検証委員会の資料や調査報告書を読んでも、当時の状況を理解できなかったと奥さんは感じていた。裁判官ら関係者に当時の様子についての理解を深めてもらおうと、気象を示すニュース映像やドローン映像などと、自身の作成した3DCGを使った解説を合わせ、18分40秒の動画にした。

 動画の作成は今年4月から始めた。5月には実際に事故現場に赴き、木々の状態や位置関係などを調べた。当時の茶臼岳の様子を再現した3DCGでは、雪崩が起きやすい30度から45度の角度の斜面を赤く染め、事故があった地点は立木が少なく雪崩が起きやすい典型的な地形だったなどと説明している。

 奥さんが話を聞いた雪崩の専門家によると、人が巻き込まれる雪崩の約9割は、発生しやすい場所に足を踏み入れた衝撃で誘発されるという。奥さんは「リスクを取る行動はすべきではなかった」と指摘。「多少なりとも知識を持っていた被告らなら、雪崩の危険性が高い斜面だったと、少し考えればわかることだと伝えたかった」と話す。

 事故は、学校の部活動として行われた「春山安全登山講習会」で起きた。奥さんは、「山岳事故だから仕方がないという見方をする人は一般的に多いと思うが、そうではない。動画を見て少しでも何かがおかしいと感じてもらいたい。事故を教訓として残し、けじめが必要だ」と訴える。

 県や3教諭らは民事裁判で、「気象情報から雪崩発生が予測できたことは否認する」などとして、争う姿勢を示している。

 動画は再編集し、那須雪崩事故遺族・被害者の会ホームページ(https://nasu0327.com/)で後日公開する予定。

3教諭への当事者尋問は却下

 奥さんら一部の遺族が県と引率教諭3人、県高等学校体育連盟(県高体連)に計約3億8500万円の損害賠償を求めた訴訟の第4回口頭弁論が16日、宇都宮地裁(浅岡千香子裁判長)であった。奥さんが作成した、事故当時の状況を再現する動画が証拠として法廷で流された。原告側が求めてきた3教諭への当事者尋問は「必要性がない」として、却下された。

 閉廷後、当事者尋問の要望が却下されたことについて奥さんは、「民事裁判の一つの大きな目的が3人の口から直接、事故の状況や彼らがどのように考えているのか聞くことだった。すごく残念だが、刑事の方で被害者参加制度を利用して、彼らの思いや事故の状況を確認したい」と述べた。

 次回期日は来年3月8日の予定。遺族5人の当事者尋問が行われる。【面川美栄、渡辺佳奈子】

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