こっそり集めた車両で… へき地で「快走」する廃線ツーリズム

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陸別駅構内を行く運転体験の車両。操っているのは小学生だった=北海道陸別町で2022年10月8日、山本直撮影
陸別駅構内を行く運転体験の車両。操っているのは小学生だった=北海道陸別町で2022年10月8日、山本直撮影

 鉄道開業150年の節目というのに、へき地の鉄道経営を巡る環境は厳しくなるばかり。そんな中、廃止された鉄道を活用して運転・乗車を体験できる「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」(北海道陸別町)が快走している。「成功するわけがない」との声もあったが、地元の周到な準備が実を結んだ。人口約2200人の道東の町を訪ね、成功の背景を探った。

 2022年10月の週末、「道の駅」も兼ねた、りくべつ鉄道陸別駅は観光客でにぎわっていた。大手旅行会社の「廃線ツアー」の参加者がディーゼル車(気動車)に乗り込み、1・6キロ北までを3往復。時速20キロほどで走るローカル線の揺れに身を委ねた。埼玉県川口市の会社員、柏木信一さん(64)は「趣味で各地を巡っているが、なくなったはずの路線に乗車できるなんて格別」と笑顔を見せた。

 駅へ戻ると、男子小学生が初心者コースの車両の運転台に座り、指導を受けながら構内を行ったり来たり。なかなか巧みである。運転体験は▽初心者用の駅構内▽500メートル▽1・6キロ▽2・8キロ▽5・7キロ――の5コース。陸別駅を起点に5・7キロもの線路を維持し、廃止前に使われていた車両を走らせているのは全国でもここだけだ。シーズン中はほとんどが予約で埋まり、全て合わせて150回以上乗ったつわものもいる。

廃線後の「賭け」

 陸別は冬季に氷点下30度を下回ることもあり「日本一寒い町」を標ぼう。明治期に開拓が始まり、林業と酪農が盛んだった。鉄道は十勝の池田町から陸別までが1910年に開通。翌11年に北見(当時は野付牛(のつけうし))に延伸し、池北(ちほく)線(全長140キロ)として国鉄からJR北海道へと承継された。しかし、過疎による利用者減で89年、道や沿線1市6町が出資する第三セクター「ふるさと銀河線」に移行した。

 問題はここからだ。基金の運用益で赤字を補塡(ほてん)しながら運営する計画が折からの低金利で頓挫、経営が行き詰まる。道は03年、7市町に鉄道廃止とバスへの転換を提案。JRが通る北見市と池田町は廃止の影響が小さく「やむなし」の姿勢だったが、他5町は反対した。

 中でも両市町のほぼ真ん中にある陸別町は強硬に抵抗。町内で05年2月に開かれた「存続大集会」では約1400人が気勢を上げた。当時の金沢紘一町長は「廃線は後世に禍根を残す」と訴えたが、翌3月の運行会社の取締役会では歩調を合わせてきた足寄(あしょろ)町、本別(ほんべつ)町も賛成に回った。そして、06年4月20日に運行終了されることが決まった。

 ここで陸別町と町商工会は鉄道を動態保存し、観光に生かそうという「賭け」に出る…

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