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ある会合で。ロシア専門のジャーナリスト、石郷岡建さん(75)が「本を出したんだよね」と言うので「へえ」と応じたら、「読むならあげるけど、読まないならあげない」なんて言う。そう言われたら「読まない」とは言えない。
カバンから大事そうに取り出した本を見て驚いた。分厚い大著で、全20章もある。タイトルは「杉原千畝(ちうね)とスターリン」(五月書房新社)。その下に「ユダヤ人をシベリア鉄道へ乗せよ! ソ連共産党の極秘決定とは?」。帯も著者のように冗舌だ。「スターリンと杉原千畝を結んだ見えざる一本の糸 衝撃の歴史が浮かび上がる イスラエル建国へつながるもう一つの史実! 英独露各国の公文書を丁寧に読み解く」。「ビックリマークが多いですね」と言うと、「あ、でも、帯書いたの、僕じゃないから」と少し照れている。「構想から出版まで10年もかかった」そうで、写真も資料集みたいに満載だ。
本はこう始まる。<正直にいえば、杉原千畝の「命のビザ」については、あまり関心はなかった。何かユダヤ難民を救うために、日本政府の命令に背いた外交官がいたらしいという程度の理解しかなかった>。私もそうだが、ではなぜこんな大著を。謎を知ろうとページをめくると、100人を超す人物のめくるめく物語に引き込まれ、丸2日で読み切った。
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