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戦争の早期終結を求める世界の声の高まりを反映したものだ。
ロシアのウクライナ侵攻に対して、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、「参加国の大半が戦争を強く非難した」との宣言を採択した。
日米欧とロシアの対立で取りまとめが危ぶまれていたが、決裂という最悪の事態は回避された。
「核兵器の使用や脅しは許されない」と、威嚇する発言を繰り返してきたプーチン露大統領をけん制する文言も盛り込まれた。
対露制裁に距離を置いてきた新興国も姿勢を変化させている。インドのモディ首相は「戦争の時代にしてはいけない」とプーチン氏に伝えた。中国の習近平国家主席も核の使用や脅しに反対することでバイデン米大統領と一致した。
ロシアが宣言を受け入れたのは、国際社会からこれ以上、孤立することは避けたいとの思惑があったからではないか。
主に世界経済の課題を議論してきたG20が安全保障の問題に踏み込むのは、各国の危機感の表れだ。ロシアは重く受け止め、直ちに攻撃を停止する必要がある。
だがG20の分断が解消されたわけではない。宣言は、ウクライナ侵攻への非難とは「異なる評価もあった」とロシアの主張も取り入れた。異例の両論併記にすることで、辛うじて折り合った形だ。
会議も、日米欧の首脳と、プーチン氏の代わりに出席したラブロフ露外相の応酬に時間が費やされた。この結果、世界が直面する食料・エネルギー危機の克服に向けた具体策には踏み込めなかった。
物価高騰で各国の景気は大幅に悪化している。特に途上国への打撃は大きい。国連によると、過去最多の3億4500万人が深刻な飢餓に直面している。
世界経済を安定させるのは主要国の責務だ。安全保障で対立していても、グローバルな課題には結束して対応しなければならない。
2008年のリーマン・ショック直後にG20サミットが創設された際は、米中が連携して、不況脱却に一定の役割を果たした。
近年は米中対立の影響で機能不全に陥っているとも指摘されてきた。しかし、今回は、世界経済が同時不況に陥る瀬戸際にある。G20が責任を果たすべき時だ。