/49 強盗団に「チャアチャア」と襲われ、「脱黒船」計画を断念 /岡山
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「やはり蒸気船(サスケハナ号)に帰りたい」。和歌山県出身の岩吉が突然、切り出した。1852年夏、香港停泊中の米国軍艦から逃れ、黒船とは別の帰国への道を求めて九竜城下の町を抜け出たところだった。岡山県倉敷市出身の徳兵衛ら、他の日本人漂流民仲間8人は岩吉の突然の変心に驚き、いろいろ説得を試みるが応じない。「心任(こころまかせ)にセよ」(徳兵衛「漂流記」=岡山県津山市の津山郷土博物館蔵)とあきらめて岩吉と別れ、8人は歩き始めたが、彼の嗅覚の鋭さは、この直後に証明されてしまう。
約100メートル進むと山道に入った。坂道を歩いていると、突然、後ろから大きめの石1個が飛んできた。驚いて振り返ると、60~70人が手に鉄砲や棒を持って迫り、たちまち周囲を囲まれた。彼らは「チャアチャアチャア」と言いながら襲いかかり、身動きできないようにして、日本と米国の金貨や銀貨、米国のペーパーナイフ、ペンなどの小道具類のほか、サンフランシスコ滞在中に撮影された肖像写真も奪い取られた。さらには服…
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