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松喬日和

落語家の笑福亭松喬さんによるコラム。月1回掲載します。

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紅白「大トリ」に異議 ちっぽけなトリが思う語源の意味

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落語家の笑福亭松喬=大阪市北区で2021年6月29日、菱田諭士撮影
落語家の笑福亭松喬=大阪市北区で2021年6月29日、菱田諭士撮影

 最近「大(おお)トリ」という言葉をよく耳にします。近所の小学校の運動会でも「本日の大トリは6年生による組み体操です」とアナウンスしていました。この言葉は現代に作られた言葉です。語源となった寄席にはトリ(主任)はおりますが、大トリはおりません。

 昔の寄席は、1カ月を三つに分ける上(かみ)席、中(なか)席、下(しも)席の10日興行ではなく、出演者は1日交代でした。その日の売り上げから席料(会場費)を引いた残りは、一座の一番上の落語家(主任)が、まとめて受け取っていました。全員の「割り(出演料)」を取るので「トリ」。推測ですが、少しでもたくさんの「割り」をもらいたい後輩たちが使った隠語だったと思われます。転じて、最後の演者=一番の実力者を「トリ」と呼ぶようになりました。現在、東西の寄席でトリが「割り」を決めることはありません。

 「大トリ」を使いだしたのはNHKの紅白歌合戦といわれています。先の組のトリに対し、後の組のトリが「大トリ」。最近では引退する北島三郎を、紅(あか)組、白組のトリの後で歌う「究極の大トリ」と称していました。尊敬の念を表したいのはよくわかりますが、適切な言葉とは思えません。手紙の宛名に「大先生様」と付けているのと同じ。神社でおみくじを引いて「究極の大吉」が出たら素直に喜べますか。私は「大吉が気を悪く…

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