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3年ぶり日中首脳会談 関係安定化への出発点に

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 日中両国が関係を安定化させる出発点になることを期待したい。

 岸田文雄首相と習近平国家主席がタイで会談した。対面での首脳会談は3年ぶりだ。

 今年は国交正常化から50年にあたる。中国では、5年に1度の共産党大会が開かれ、習氏が異例の3期目入りを果たした節目の年である。

 習氏は「新たな時代の要求にふさわしい関係を構築したい」と述べた。首相は「建設的かつ安定的な関係の構築が重要だ」と応じた。首脳同士が関係の重要性を確認した意義は大きい。

 林芳正外相の訪中を調整するなど閣僚級の対話枠組みの早期再開を目指す。相互利益に資する経済協力や人的交流を進めることで一致した。

 注目されるのは、安全保障分野の意思疎通の強化で合意したことだ。緊張の高まりに歯止めをかける重層的な対話チャンネルの確立が急務となる。

 国際社会の安定のため協調する必要性も認めた。ロシアのウクライナ侵攻に関し、核兵器の使用反対で一致したのはその表れだ。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応で中国が役割を果たすよう、日本は期待を表明した。

 合意内容を見ると、実務的な協力が目立つ。対立を制御し、停滞していた対話を仕切り直す現実的な判断と言える。

 一方で、両国が抱える懸案から目をそらすことはできない。

 沖縄県・尖閣諸島周辺では中国公船が領海侵入を繰り返す。8月には中国が台湾海峡で軍事演習を実施し、弾道ミサイルが日本近海に落下した。

 首相は「深刻な懸念」を伝えたが、習氏は台湾問題を念頭に「内政干渉は受け入れない」と強調するなど議論はかみ合わなかった。

 日中関係の原点は、悲惨な戦争の反省にある。ロシアの暴挙で世界が揺れる今こそ、そのことを思い返すべきだ。不毛な軍拡競争に陥り、衝突のリスクを高めてはならない。

 日中は政治体制や価値観が異なるが、隣国として共存の道を探る必要がある。米中対立が続く中、日中両首脳は率直な対話を積み重ね、東アジアの安定と繁栄に寄与する関係を築かねばならない。

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