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「食糧安全保障」を考えるには、戦後史を見通す作業が要る。長年にわたり、欧米の農政や世界の食料事情を見つめてきた農林中金総合研究所・理事研究員の平澤明彦さんの話からは、日本と欧州の鮮明な違いが浮かび上がる。
――世界の農政に共通する基準のようなものは見えますか。
◆土地という資源。すなわち、国民1人あたりの農地面積の多寡に左右される要素が非常に大きいと言えます。一般に、農地が広ければ余剰が生じ、国内で消費しきれない分は輸出に回す。一方、農地が狭ければ生産は不足し、需要をまかなえない分は輸入に頼る。同時に、広い農地を基盤に経営規模が大きければ価格競争力は高まり、小さければ低い。これが基本的な視座です。
最も競争力があるのは豪州で、それに次ぐ米国は不足払いと呼ばれる補助金で競争力を高めてきました。一方、競争力で劣る欧州各国の補助金政策は、国内生産保護の色彩が強かったといえます。日本の場合は、人口あたりの農地面積が極端に少ないという点が際立ちます。
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