「ワンピース」ファンの皇太子が進める改革 サウジアラビアの光と影

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「サウジアニメエキスポ」の会場で、女性コスプレーヤー(左)の写真を撮る全身黒衣の少女=リヤドで2022年10月27日午後7時18分、真野森作撮影
「サウジアニメエキスポ」の会場で、女性コスプレーヤー(左)の写真を撮る全身黒衣の少女=リヤドで2022年10月27日午後7時18分、真野森作撮影

 米露や中国など多極化する国際社会の中でバランス外交を展開し、「石油依存脱却」を掲げて巨大開発を進めるサウジアラビア。変化する石油大国の現状を2回で報告する。

 <前編(https://mainichi.jp/articles/20221123/k00/00m/030/074000c)は「砂漠に現れる異形の未来都市」です>

娯楽解禁でコスプレ

 進撃の巨人、ワンピース、名探偵コナン……。日本の人気アニメのブースが連なり、地元男女のコスプレーヤーに全身黒衣の少女らが記念撮影をねだる。サウジアラビアの首都リヤドの大規模展示場で10月下旬、3年ぶり2回目の開催となった「サウジアニメエキスポ」での一場面。日本人歌手のコンサートも催されるなどお祭りムード満載だが、実はサウジ政府の主催。中東最大規模とされ、初日だけで1万人超が来場する盛況ぶりだった。

 紫色のカツラをつけてコスプレを楽しんでいた地元の女子大学生サラーさん(21)は「サウジでは今後こうしたイベントがどんどん増えるはず。日本の漫画やアニメのほかに、韓国のK―POPも流行している」と語り、「(娯楽の解禁を進める)ムハンマド皇太子には感謝している」と付け加えた。

 厳格で復古主義的なイスラム教ワッハーブ派の信仰を奉じるサウジだが、ムハンマド氏(37)が2017年に皇太子となって以降は社会改革が急ピッチで進む。1980年代に姿を消した映画館や音楽コンサートの復活、解禁がその代表例だ。

 サルマン国王(86)の下で16年に発表された経済改革策「ビジョン2030」では、産業多角化の柱の一つにアニメ、漫画、テレビゲームといったエンタメ産業が含まれる。ムハンマド氏は「ワンピース」のファンとされ、この分野における最大の理解者だ。社会・経済両面での改革が娯楽産業の発展にとって追い風となる。アニメ制作会社は年々増え、アニメ関連の人材育成に取り組む大学もあるという。

 アニメや漫画の情報を発信するサウジのベンチャー企業「アニメ・セラピー」の代表、フセイン・サフランさん(30)は「サウジは今やアニメビジネスで中東の一大拠点となっており、日本とは多くの協業が実現している」と語る。21年には、古代のアラビア半島を描いた日サウジ共同製作のアニメ映画「ジャーニー」が公開された。

 サウジなど中東諸国では70年代以降に日本アニメの吹き替え版がテレビ放映されており、慣れ親しんで育った人々の層は厚い。好きな作品としてよく挙がるのは「マジンガー」シリーズ第3作の「グレンダイザー」などだ。

 サフランさんは「サウジと周辺地域は豊かな物語の宝庫。道は長いが、これらを基にしたアニメを制作する手助けをしたい」と意気込んだ。

アニメ内の肌露出にも寛容に

 社会改革は娯楽以外の面でも進む。イスラム教の復古的解釈に基づく女性関連の規制が緩みつつあるのは、大きな変化だ。風紀を…

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