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「ガチガチの既成概念」打ち破る 塩野義コロナ新薬の誕生秘話

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化合物ライブラリーの前でコロナ飲み薬について話す塩野義製薬の立花裕樹さん=大阪府豊中市で2022年2月24日、木葉健二撮影
化合物ライブラリーの前でコロナ飲み薬について話す塩野義製薬の立花裕樹さん=大阪府豊中市で2022年2月24日、木葉健二撮影

 開発の本格化からわずか2年。塩野義製薬は、新型コロナウイルス感染症の抗ウイルス薬「ゾコーバ」を初の国産飲み薬として実用化させることに成功した。新薬開発は平時は10年を要するのが通常で、異例のスピード。感染症治療薬メーカーとしての威信をかけたプロジェクトで、研究者らはいかに難題に立ち向かったのか。【横田愛】

 <後編(https://mainichi.jp/articles/20221124/k00/00m/020/457000c)は、「一大プロジェクトを支えた協力者」に迫ります>

 大阪市中央区道修町。江戸時代から薬種問屋が店を連ねたこの街に、塩野義製薬の本社はある。

 11月22日夕、手代木功会長兼社長をはじめ幹部十数人が本社会議室に集まった。巨大なスクリーンに映し出された厚生労働省の薬事分科会などの合同会議の議論の行方を、固唾(かたず)をのんで見守った。

 「賛成多数と認めたいと思います」。午後7時過ぎ、同分科会長を務める和歌山県立医大の太田茂教授が緊急承認の適用の了承を宣言。塩野義の会議室では拍手が湧き起こった。

 「ありがとうございました。これから頑張りましょう」。立ち上がった手代木氏は、張りのある声でこう幹部らに呼びかけた。

強みを生かす

 塩野義製薬の研究開発の中枢となった「医薬研究センター」(大阪府豊中市)は神崎川のほとりに建つ。

 建築面積1万平方メートル超の広大な建物内に、薬の「種」を保管する「化合物ライブラリー」がある。人の立ち入りを禁じた保管庫内は室温5・5度に保たれ、ガラス越しに粉末が入った小瓶が整然と並ぶのが見える。その数、数十万種類。使う際はロボットに指示して目当ての小瓶を取り出す。

 「今回の治療薬も、この中に入っていたものから出てきました」。2022年2月、同社創薬化学研究所の立花裕樹さん(現・事業開発部長)が白衣姿で案内してくれた。

 新型コロナの発生以降、立花さんは激動の日々を送ってきた。

 20年2月、新型コロナのウイルス増殖に不可欠な酵素(プロテアーゼ)の構造に関する情報が世界的に公開された。長くプロテアーゼの研究をしてきた立花さんは、創薬疾患研究所の加藤輝久さん(現・創薬疾患研究所感染症領域長)と「これなら強みを生かせる」と、2人で治療薬候補となり得る化合物を見いだす作業を始めた。

 同社は古くは抗菌薬、近年はインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」など、感染症治療薬の開発に強く、独自の創薬にもこだわってきた。

 同社の研究開発はボトムアップが特徴だ。約700人に上る研究者が、医療上のニーズと自らの得意分野を勘案して開発を始める。候補となる化合物が絞られた段階で、実用化が見込め、かつ市場性があるものを全社的なプロジェクトに引き上げる。

 2人が研究に着手した当初、社内では他の治療薬プロジェクトが先行していた。「夏には感染が収束するのでは」「頑張っても5年はかかる」。そんな空気もあり、立花さんは「最初の頃はアク…

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