「ゲイは不幸じゃない」 LGBTQユーチューバーが伝えたいこと
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LGBTQなど性的少数者をテーマに発信を続けているかずえちゃん(40)はゲイの当事者だ。動画では爽やかな笑顔を見せるが、10年ほど前まではセクシュアリティーを隠し、苦悩を抱えながら生きてきたという。誰もが生きやすい社会には何が必要か。葬送の場にも立ち会う僧侶ができることとは。ユーチューバー僧侶の小池陽人さん(36)が寺務長を務める須磨寺(神戸市須磨区)で、2人に語り合ってもらった。【構成・花澤茂人】
「バレたら終わり」と感じた小学生時代
小池 かずえちゃんがユーチューブを始めたのは6年前で、かなり早い方ですよね。LGBTQについて発信しようと思ったきっかけは。
かずえ 2013年から3年間、ワーキングホリデーでカナダに滞在しました。それまで日本では自分のセクシュアリティーを隠して生きてきたのですが、カナダで僕が勇気を持って伝えると、友達の反応は「あっ、そうなんだ」くらいで、別に驚かれることもなかった。
小池 大それたことではなく、普通の個性として受け止められたのですね。
かずえ そうなんです。背景として、カナダでは05年から同性婚ができるようになっていたことがあります。僕が行った頃には、街で男性同士が手をつないでいるとか、女性同士で家族を持っているのが当たり前の景色としてあった。そこで自分もゲイということを忘れるくらい、全然隠すこともなく生活して。しかし3年たってやっぱり日本に帰りたいと思った時に、「ゲイって別に悪いことじゃない」ということを発信できないかなと思ったのです。
小池 でも日本の状況は、3年前とあまり変わっていなかったのでは。当初は悩みもありませんでしたか。
かずえ 地元で今も住んでいる福井にもゲイの友達がいるのですが、カミングアウトしていない人が多い。でも僕がゲイだとオープンにしたことで、一緒に歩いていると自分もゲイであることがバレてしまうのではないかと「もう連絡しないで」と言われたこともあります。すごくしんどかったですが、自分自身振り返ってみて、その子を責めることはできないと思った。その悲しみや怒りは、なんでこんな社会なんだっていう方に向きました。もっともっと伝えていかないとと自分を奮い立たせるパワーにもなりました。
小池 日本社会ではまだまだ「差別される」という空気がありますね。
かずえ 僕自身は、小学校5年生くらいの時に、なんとなく周りの男の子と違うと感じました。友達が異性に抱き始めている恋愛感情が分からなかった。よく考えると、その感情が男の子に向いているなと。その時、子どもながらに「これバレたら終わりなんやな」とも感じたんです。
小池 多くの人と違う、という思いでしょうか。
かずえ そうですね。好きな給食とか、得意な授業とか、人と違うことなんかいっぱいあった。でもこの違いだけは絶対にバレちゃダメだ、と。振り返ると、テレビの影響が大きかった。ちょうど5年生ドンピシャの頃に、バラエティー番組で男性の同性愛者を誇張したキャラクターがいて、翌日には学校でもみんな「気持ち悪い」と笑っている。自分の抱いている感情って、人から笑われるし、気持ち悪い対象なんだと強く感じた。当時の先生にも、男の子同士がふざけ合っているのを注意する時に「お前らホモか」と言う人がいて、同級生がそれを見て笑っていた。先生の言うことは正しいと思っていましたから、自分の感情は「間違っている」と感じました。それが、ずっと言えなかった一つの理由だと思います。
小池 発信を続け、徐々に変わってきている感覚はありますか。
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