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足や腕に切断障害がある人がつえを使ってプレーする「アンプティサッカー」の日本選手権が19、20日に川崎市の富士通スタジアム川崎で開かれ、FCアウボラーダ(東京)が連覇を果たした。選手たちはフィールドを縦横無尽に駆け巡り、激しく体をぶつけ合って熱戦を繰り広げた。
アンプティサッカーは、病気や事故で足を失った人が「クラッチ」と呼ばれるリハビリ用のつえを使ってフィールドを駆ける。クラッチで故意にボールに触れるとハンドの反則。ゴールキーパーは片腕に障害がある人が務める。試合は7人制で、20~25分ハーフ。フィールドは縦60メートル、横40メートルで少年サッカーとほぼ同じサイズだ。
日本アンプティサッカー協会には北海道から大分までの11チームが加盟し、競技人口は約100人。11回目となる今大会には、千葉の「ACミランビービー千葉」や神奈川・埼玉の「FC TS―ONE 2022」、「FC九州バイラオール」(大分)と「関西セッチエストレーラス」(大阪)の合同チームなど、5チームが参加した。
小雨がぱらつく中で行われた決勝は、アウボラーダが分厚い攻撃力を発揮して合同チームに6―1で快勝。正確なパスでアウボラーダの攻撃のタクトを振ったエンヒッキ・松茂良(まつもら)・ジアス選手(33)がMVPを獲得した。
エンヒッキ選手はブラジル出身で、5歳の時に交通事故で右足を失った。18歳でアンプティサッカーのブラジル代表に選ばれ、翌年に親戚がいた日本で就職。以来、アンプティサッカーがほとんど知られていなかった日本で普及に努める第一人者だ。日本代表でも中心選手として活躍しており、9~10月にトルコで開催されたワールドカップ(W杯)にも出場。24カ国・地域中11位という成績を収めた。

エンヒッキ選手は「足がなくてもこれだけ動けるということによく驚かれます。カーブや、ぶれ球のシュートを蹴る選手もいるんですよ」と胸を張る。
大会では、同じ日本代表で「ガネーシャ静岡AFC」(静岡)主将、後藤大輝選手(20)も輝きを放った。
初戦となったアウボラーダ戦。終始相手に押し込まれる苦しい展開を強いられたが、試合終了直前、相手ゴール前でボールを持つと俊敏なフェイントでディフェンスをかわし、大きく左へジャンプ。そのままボレーシュート気味に左足を振り抜き、ゴールネットを揺らして一矢報いた。
試合後、相手選手から「猫のような動きだった。ほれぼれした」と絶賛された後藤選手は「あれはうまかった。大会ベストゴールでしょ」とおどけながらも満足そうだった。
後藤選手は先天性の病気で1歳の時に右足首を切断。実家が道場だったこともあって2歳から空手を始め、全国優勝の経験もある。さらに、義足を使って通常のサッカーもプレーしており、中学時代はサッカー部で主将を務めていたという。
高校時代にアンプティサッカーを知り、「これなら他の選手と同じ条件で戦える」とクラッチを握った。わずか3年で日本代表にも選ばれ、W杯では7試合で3得点を挙げた。「俊敏さやキック力など身体能力には自信がある。見ていてびっくりするようなプレーをするので、たくさんの人に観戦してもらいたいですね」と語った。【竹田直人】