「女芸人」ではなく「芸人」 Dr.ハインリッヒの革命
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「芸人」と聞いて多くの人の頭に浮かぶのは、男性だろう。「漫才師」と聞けば、男性同士のコンビ。今日のお笑い界ではまだまだそれが「普通」だ。その意味で、いま注目を集めるDr.ハインリッヒは全然普通じゃない。
幸(みゆき)と彩(あや)は女性で双子。当然、「女芸人」「双子コンビ」と紹介される。ところが、漫才用のサンパチマイクの前に立った2人は、女性であることも双子であることもネタにしない。2人にとってはそちらが「普通」。マイクの前では、普通のことではなく、面白いことをしゃべりたい。
2人の漫才は、例えばこんなふうに始まる。タイトルは「みょうが」。
幸 わたくしこないだ道を歩いてたんですよ。
彩 自分こないだ道を歩いてたんかいな。ええやん。
幸 ええやろ。道歩いてたらね、ミョウガみたいな犬見たんですよ。
彩 ミョウガみたいな犬見たんや。何それ?
幸 色が全体的にパープルで、しっぽの方はグリーンやねん。パープル、グリーンっていうグラデーションやねん。
彩 グラデーションな。
幸 ミョウガみたいやなって思って見てたんや。ほんで犬と飼い主の人歩いてくるやん。わたくしも歩いてくるやん。で、近くでよくよく見たら、これミョウガみたいな犬ちゃうかってん。
彩 これ何やったん。
幸 これミョウガやってん。
他にも「トンネルを抜けると」「風、新約聖書」「水瓶(みずがめ)の女神様」など。タイトルからして独自の世界観を放つ漫才は、文学作品を思わせる言葉選びと突拍子もない展開で、やみつきになる面白さがある。今年は2月に大阪・なんばグランド花月、10月には東京・浅草公会堂で大規模ライブを成功させた。
テレビの壁、劇場の壁
結成は2005年。ダウンタウンが好きで▽子どもの頃から芸人が夢で▽吉本興業のお笑い養成所に入り▽「自分たちが一番面白い」と信じて疑わないとがった20代――だった。この世代で芸人を目指した若者たちの、ごくごく一般的な来歴。だが、2人は女性だった。
まずぶつかったのはテレビの壁。下ネタに過剰に反応してみせることを求められ、収録前に提出するアンケートでは「抱かれたい男芸人は?」と聞かれた。
「これは必須科目なんか?というぐらい、絶対聞かれましたね。…
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