連載

14色のペン

国内外の異なる部署で取材する14人の中堅記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。

連載一覧

14色のペン

三島由紀夫を「アイコン化」する右派議員の耐えられない軽さ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
一水会などが開いた三島由紀夫、森田必勝の追悼祭の祭壇=東京・高田馬場で2022年11月24日、吉井理記撮影
一水会などが開いた三島由紀夫、森田必勝の追悼祭の祭壇=東京・高田馬場で2022年11月24日、吉井理記撮影

 先週金曜日の11月25日は、52年前に作家の三島由紀夫が「楯の会」の学生らとともに東京・市ケ谷の陸上自衛隊駐屯地に乗り込み、「割腹自決」をした日でした。現代の永田町でも「三島を尊敬している」と口にする国会議員がいるのですが、違和感が残ります。【東京学芸部・吉井理記】

 僕が毎年11月25日の前後に行われる会合に参加するようになったのは、数年ほど前からだ。1970年、自衛隊に「決起」を呼びかけたものの果たせず、自決した三島と「楯の会」学生長の森田必勝の二人を追悼する集まりだ。今年も東京・高田馬場で24日、民族派団体「一水会」などが開催した。

 自分のことを言えば、三島の考えや価値観の多くに共鳴しているわけではない。ただ、沖縄の辺野古新基地の問題を取材した約10年前、沖縄の人たちを苦しめてきた米軍基地と日米安保体制に関心を持つようになってから、三島の主張のある部分について考え続けてきた。三島は日米安保体制を激しく批判し、決起を呼びかけるにあたって記した檄文(げきぶん)で「自衛隊はアメリカの傭兵(ようへい)」などと指弾していたからだ。

 「今も三島先生の訴えは色あせてはいません」と話すのは「一水会」代表の木村三浩さん(66)だ。「日本と日本人の安全をどう守るか(を)、日本人が決める国にすることが三島先生の考えでした。ところが現実は全く逆です。日本をいよいよ危地に導こうとしています」

 米軍の戦闘に自衛隊が加わる道を開く安保法制を安倍晋三政権が成立させたのは7年前。最近では自民党安倍派(清和政策研究会)など右派を中心に防衛費の倍増が叫ばれ、その意を受けた岸田文雄政権は「敵基地攻撃能力」の獲得を目指し、米ミサイル「トマホーク」を買い込もうとしている。

 「どれもアメリカの存在を前提にした話です。外交も同じ。アメリカと一緒になって中国やロシア、北朝鮮を敵視し、脅威をあおるような議論ばかりです。アメリカの『虎の威』を借りつつ、自分たちの『鬱憤』を晴らそうとするかのような言説が目立ちます」

 その安保政策のベースをつくる自民党安全保障調査会。まとめ役を担う議員の一人に話を聞いたことがある。この議員は、安保法制と安倍氏を強く支持し、昨年の総裁選では安倍氏が推した高市早苗氏を支援していた。

 議員の事務所には額に入れられた「教育勅語」の全文が掲げられていた。教育勅語は1948年に衆参両院で排除・失効が決議されているが、それは脇に置こう。何を信奉するかは自由である。むしろ、引っかかったのは…

この記事は有料記事です。

残り638文字(全文1684文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集