虐待通報9件、SOSなぜ生かされなかったか 介護受ける男性暴行死
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自宅で介護を受けていた高齢男性が2年前、同居の長男(51)から暴行を受けて死亡する事件があった。以前から虐待を疑う通報が行政や警察に計9回寄せられ、行政の担当者が少なくとも14回にわたって自宅訪問や電話をしていた。「毎日たたかれている」と周囲に打ち明けていた男性。多くの「SOS」はなぜ生かされなかったのか。【松本紫帆】
怒鳴り声、あざ……事件前の異変
死亡したのは大阪府高槻市内のマンションに住んでいた当時78歳の男性。2018年に脳梗塞(こうそく)で倒れて右半身まひの後遺症が残り、同居の長男や妻(81)が介護していた。
事件は20年7月21日夜に起きた。自宅ベッドで倒れている男性が見つかり、翌日に病院で死亡が確認された。背中などに計9カ所の骨折、体中に打撲痕があった。府警は約7カ月後、長男を傷害致死容疑で逮捕した。長男は関与を否定したが、激しい暴行で男性を死亡させたと判断された。
「ただごとではないと思い、今すぐ家族と引き離してほしいと伝えました」
22年1月に始まった裁判員裁判では、事件前から察知されていた数々の「異変」が明らかにされた。
同じマンションに住む女性は、20年の春先から男性宅で怒鳴り声やたたく音がするのを繰り返し聞いたと証言した。事件の1カ月前には顔に多数のあざがあり、耳が腫れている男性の姿を目撃した。虐待相談窓口である地域包括支援センターにすぐに通報し、男性の保護を求めた。「まるでリンチされた体のようだった」と震えるような声で振り返った。
警察「本人が否定なら介入困難」
男性宅を巡る通報はこの1回だけではなかった。同…
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