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映画を10分程度に編集した動画「ファスト映画」の無断投稿に、厳しい司法判断が下された。
ネット上に公開した男女2人に対し東京地裁は、損害を受けた大手映画会社などへの総額5億円の賠償を命じた。著作権法違反での有罪はすでに確定している。
コンテンツ海外流通促進機構によると、昨年6月時点で2100本あまりが投稿され、被害総額は推計950億円に上る。
横行を許せば、新たな作品の創造が阻害され、映画文化にとって大きなダメージとなる。
ファスト映画が広がった背景として指摘されるのは、若者を中心にしたタイムパフォーマンス(時間効率)を重視する傾向だ。映画を含む動画コンテンツを倍速など早送りで視聴するライフスタイルにも表れている。
市場調査会社クロス・マーケティングが昨年3月に実施したインターネット調査によると、20代の半数近くが倍速視聴の経験があるという。
ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなど定額見放題の動画配信サービスが定着し、視聴できるコンテンツが格段に増えた。
友人と常にSNS(ネット交流サービス)でつながっている若者が多い。同世代の人気を集めている映画やドラマを限られた時間で視聴し、話題を共有したいという思いに駆られている。
調査に対して20代の3割近くが「効率よくたくさんの動画を視聴できる」と答えている。
社会の変化につれて暮らしのスピードも変わる。映画の楽しみ方にも時代が反映される。倍速視聴で話の筋や結末をおおまかに知ってから、じっくりと鑑賞する人もいるだろう。
とはいえ、倍速視聴ばかりになってしまっては味気ない。情景の奥行きやせりふの機微を味わい、人生について考えてみるのもまた、映画を見る楽しみの一つであるはずだ。
倍速視聴の潮流を意識した作品が幅を利かせるようになれば、映画の多様性が失われかねない。
アクションや文芸、社会派などさまざまな世界を楽しめるのが魅力だ。映画文化を守るためにも一人一人が作品に合った楽しみ方を考えたい。