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歴史的な成果を導いた「成功」か、気候対策を足踏みさせる「失敗」か。エジプトで2週間にわたって開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の結果を報じる内外のメディアは、2通りの見方を伝えました。どちらも正しい評価と考えますが、今回は紙面ではあまりスペースを割けなかった後者について掘り下げます。【外信部・八田浩輔】
200近い国と地域の妥協の産物であるCOPの評価は難しいのが常だが、今年も例外ではなかった。COP27は、島しょ国や貧しい途上国にとって30年来の悲願だった気候災害の被害の救済にかかわる基金創設という「歴史的」な合意につなげた。ところが、会期延長の末に5時間近くに及んだ閉会式で発言した参加国の代表たちはこぞって「遺憾」や「失望」を口にした。肝心の排出削減で強いメッセージを打ち出すことにつまずいたからだ。
前年のCOP26で参加国は、産業革命前からの地球の気温上昇を1・5度に抑えるための努力を続けることで一致し、石炭火力の「段階的な削減」を初めて成果文書に盛り込んだ。今回は、この表現から踏み込めるかが一つの焦点だった。欧州や島しょ国は削減の対象を「すべての化石燃料」に広げるよう主張し、賛意は80カ国以上に広がった。しかし、「温室効果ガス排出の削減に焦点をあてるべきで、個別のエネルギー源を標的にすべきではない」と訴えるサウジアラビアなど石油・ガス産出国の結束は固く、文書の表現は結果的に前年の「コピペ」にとどまった。
こうした経緯から、欧州メディアには「COP27で1・5度目標は死んだ」と書いた記事もあった。私の印象は少し異なる。
1・5度目標の実現には、…
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