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秋葉復興相と首相 「説明責任」語るだけでは

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 岸田政権の閣僚に新たな疑惑が浮上している。親族への事務所賃料の支出が「ファミリービジネス」と問題視されている秋葉賢也復興相である。

 1カ月で3人の閣僚が辞任したばかりだ。岸田文雄首相が「説明責任」と繰り返すだけでは、失われた信頼は取り戻せない。

 秋葉氏が代表を務める政治団体が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体に「会費」を支出していたことが明らかになった。昨年分の政治資金収支報告書に記載されていた。

 8月の就任時には会費の支払いは「一切ない」と話していた。報道されるまで隠していたのではないかと疑われても仕方あるまい。

 きのうの衆院予算委員会で「会費」から「雑誌購読料」に訂正する意向を示し、「教団の関連団体と知らなかった」と釈明した。だが、実態は会費だったのではないかと野党から追及された。

 昨年衆院選の選挙運動を巡る疑惑も取り上げられた。秋葉氏の名前が入ったたすきを次男が路上でかけたと認めた。公職選挙法では、候補者本人のみに認められる。

 秘書2人に給与とは別に運動の報酬を支払っていた。公選法で支出が認められる車上運動員だったとして、秋葉氏は問題ないとの認識を示した。ただ、通常、秘書を車上運動員とすることはない。

 秘書の活動記録を示すよう求められても、当初は「法律上の義務でない」と拒み、その後「1年も前だから資料がない」と説明を変えた。誠実さを欠いた答弁だ。

 公務に支障も出ている。国会準備で被災地視察を突然キャンセルした。野党の辞任要求は当然だ。

 首相は閣僚の不祥事が起こるたびに本人任せにし続け、政権運営の混乱を招いてきた。

 にもかかわらず、秋葉氏に対しても「復興相としての職務も説明責任も大事だ。両方の責任を果たしてもらう」と語り、続投させる構えだ。

 首相自身も選挙運動費用を巡って不適切な事務処理を認め、対応を余儀なくされた。

 政権に対する国民の不信は高まっている。閣僚が「説明責任」を果たせないのであれば、任命権者として速やかにけじめをつけるべきだ。

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