ブレた「医療崩壊」の定義 大阪・吉村知事、感染拡大後は口閉ざす

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取材に応じる大阪府の吉村洋文知事。新型コロナウイルス対策の発信で全国的な知名度を高めた=大阪市中央区で2020年7月3日午後7時17分、藤井達也撮影
取材に応じる大阪府の吉村洋文知事。新型コロナウイルス対策の発信で全国的な知名度を高めた=大阪市中央区で2020年7月3日午後7時17分、藤井達也撮影

 大阪府の吉村洋文知事が、まもなく1期4年の任期(2019年4月~23年4月)を終える。報道陣の取材に連日応じるなど発信力の高い政治家で知られるが、その任期のほぼ全てを見てきた記者は、質問と吉村氏の答えがかみ合わない場面をたびたび経験した。発言の一貫性に疑問を持ったこともある。「政治家はなぜ質問に答えないか」(ミネルヴァ書房)などの共著がある福岡工業大の木下健・准教授(政治コミュニケーション)とともに、吉村氏の発言を三つのテーマで検証する。【石川将来】

感染拡大初期は率先して使ったワード

 まずは、新型コロナウイルス対策に関する言葉を追う。コロナ禍では、政治家の言葉が国民とのリスクコミュニケーション(リスクについて共有を図ること)の大事なツールとなった。数多くのテレビ番組に出演して意見を述べた吉村氏は恐らく、コロナ対策を巡って全国で最も知名度を上げた知事の一人だろう。一方で、その発言がブレたのが「医療崩壊」を巡る認識だった。

 「急激な感染拡大で医療崩壊するのが一番危険。想像力を生かし、先手の対応を取ることが必要だ」。20年2月18日に開かれた府の新型コロナ対策本部会議で、吉村氏は険しい表情で語った。国内で新型コロナの感染者が初めて確認されたのが1カ月前。府内で確認された感染者はこの時点で1人だけだったが、吉村氏は当時から医療崩壊という言葉を使って危機感を示していた。会議では、他の自治体に先立ち府主催のイベントを原則中止・延期とし、府職員の時差出勤も2日後に取り入れると決めた。

 その後、国内の感染者が急増し、4月に初めての緊急事態宣言が全国で発令される。そして5月、医療崩壊という言葉を巡って吉村氏と他の首長との間で論争があった。

 府内の一部病院で一般医療の重症者や急患ら3次救急の受け入れが制限されたと報じられたのをきっかけに、愛知県の大村秀章知事から「病院に入れない、救急を断るのは医療崩壊。医療崩壊を起こしたら行政としては負けだ」と批判されたのだ。これに吉村氏はツイッター上で「大阪で医療崩壊は起きていません。何を根拠に言っているのか全く不明です」と反論した。一方で、大村知事が記者団に「『違う』というのならデータで示すべきだ。言い訳だ」と語るなど応酬になった。

医療逼迫後、変わった認識

 毎日新聞は記者会見を通じ、吉村氏に医療崩壊への認識を定期的に尋ねてきた。7月10日、記者が「知事が防ごうとしている『医療崩壊』とは何か」と質問すると、…

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