農村を見捨てる?農水省の統計調査廃止に研究者が猛反発

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集落の情報は防災対策や過疎化対策としても重要なものとなっている=山形市で2022年7月29日、宮間俊樹撮影
集落の情報は防災対策や過疎化対策としても重要なものとなっている=山形市で2022年7月29日、宮間俊樹撮影

 農林水産省は農村を見捨てるのか――。農水省が5年に1度実施している統計調査の一部「農業集落調査」の廃止を打ち出したことに、研究者らが強く反発している。同省は代替案を示したものの、意見対立は収まらない。取材を進めると、今後の研究や政策づくりへの支障を危惧する研究者と、手間のかかる調査の継続に後ろ向きな農水省の隔たりが見えてきた。

研究者「なんとかせねば」

 11月9日、農水省。海老沢衷・早稲田大名誉教授(日本中世史)ら研究者有志は、調査継続を求める1131人分(7日時点)の署名簿や、調査を活用した2800件分の研究実績リストを農水省側に提出した。海老沢さんは記者団に「農業集落調査は大変重要な生きたデータ。我々としてもなんとかしなければならないと考えた」と強い危機感を示した。

 署名に賛同したのは、大学教授ら学識者が中心。調査継続を求める声は個人だけではない。農業や農業経済学、地理、歴史、工学などにまたがる12学会1団体が廃止方針を批判する声明を発表するなど騒動になっている。

 問題になっている農業集落調査とは、どういったものなのか。農水省は全農林業者を対象に、5年に1度「農林業センサス」という調査を実施している。農業集落調査はその一部だ。対象は全国に約15万ある集落のうち約14万集落。1955年の調査開始以降、農地や用排水路、ため池といった地域資源の保全活動の実態調査に加え、各集落で開かれた「寄り合い」の頻度やその議題までをつぶさに調べてきた。

農水省「もう、もたない」

 署名呼びかけ人の一人、戸石七生・東京大大学院准教授(日本村落史・環境史)は「農業集落調査はコミュニティーに関する情報を提供する国の唯一の統計調査。国土交通省などの過疎地域対策や内閣府の防災対策にも活用されている」と指摘。廃止されれば国や地方自治体の政策立案にも影響が出るとしている。

 だが、農水省統計部は7月下旬、2025年に実施する次回センサス調査について審議する「農林業センサス研究会」(座長=安藤光義・東京大大学院教授)の会合で同調査の廃止方針を表明した。「調査実施の困難さ」が理由だという。

 調査は、寄り合いの内容など集落の事情をよく知る、自治会長などの「精通者」を把握することから始まる。…

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