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11月、自衛隊と米軍が南西諸島を中心に日米共同統合演習を実施しました。沖縄県・与那国島で取材したところ、民間の空港や道路(公道)に軍用機や装甲車が姿を現し、「有事」の光景が垣間見えました。日本最西端にあるこの島から台湾までは、わずか約110キロ。島の人たちの言葉には切迫感が漂っていました。【那覇支局・比嘉洋】
「自衛隊が来る時は台湾有事がここまで騒がれることになるとは想像していなかった」。島で泡盛の酒造所を営む崎元俊男さん(57)は話す。陸上自衛隊の配備を巡る2015年2月の住民投票で配備賛成が反対を上回り、陸自駐屯地が開設されたのは16年3月。毎日新聞のデータベースで「台湾有事」の言葉が登場する記事を検索すると、15年は5件しかヒットしなかったが、今年は既に90件を超えている。崎元さんは県外の人が「別世界のこと」のように「沖縄は台湾有事で大変だね」と言うのが気がかりだ。「自分のところは戦場にならないと思っているから力対力の話ばかりするのでは」
もちろん島が常に緊張感に覆われているわけではない。11月12日には島を一周するマラソン大会が3年ぶりに開催され、25キロのコースを125人が完走した。このうち77人は島外から参加し、沿道は笑顔であふれた。自衛隊配備は過疎に悩む「国境の島」に人口や税収の大幅な増加をもたらしている。とはいえ、台湾有事を念頭に置いているとみられる日米共同統合演習の一環で11月17、18両日、民間の与那国空港に空輸された陸自の16式機動戦闘車(MCV)が島内の公道を走行した時は、にわかに緊張が高まり、沿道で見守った住民は取材に対し、「これが日常にならないことを願う」と率直に語った。島は重要な軍事拠点である、という現実が突きつけられた形だ。
有事に備え、与那国町は国民保護法に基づく住民避難の手順の年度内作成を急いでいる。手順は21年2月に一旦できあがっていたが、自衛隊員を除いても約1500人いる島民と観光客をフェリー1隻(旅客定員120人)で、通常4時間半かかる石垣島まで何往復もして避難させる想定だった。このため、「現実味がない」といぶかしむ声が上がり、公表前に見直すことになった。町関係者によると、現在、作成中の手順では複数の民間船舶を調達し、避難にかかる日数を短縮するという。
全員が避難する計画ではあるが、実際は…
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