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「音楽が持つ力」と聞くと、希望や安らぎなど肯定的な言葉を想起しがちだ。しかし音楽は時にまがまがしい力と結びつく。シンガー・ソングライターの沢知恵(ともえ)さん(51)はブックレット「うたに刻まれたハンセン病隔離の歴史 園歌はうたう」(岩波書店、11月8日刊行)を著し、音楽の残酷さに迫った。
「らい菌」によって神経のまひや皮膚のただれなどの症状が出るハンセン病は、感染力が極めて弱いのに「恐ろしい伝染病」とされ、差別や偏見の対象だった。国は明治時代から患者の隔離政策を進め、戦後に治療法が確立されてからも強制隔離の根拠となったらい予防法は1996年まで続いた。社会復帰を果たした例はわずかで、家族や故郷と縁を切られた元患者は今も全国の療養所で暮らす。
沢さんは東京芸術大在学中に歌手デビュー。幼い頃に牧師の父に連れて行ってもらった縁で、高松市の大島にある国立ハンセン病療養所「大島青松園」で毎年コンサートを開催するなど入所者と交流を続けてきた。2014年には大島に近い岡山市に東京近郊から移住し、各地の療養所に通ううちに入所者が歌った歌の楽譜を目にして気になり始めた。正確な記録がないことも知り、18年に岡山大大学院に入って「ハンセン病療養所の音楽文化史」の研究を始めた。
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