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知りたい聞きたい お金のはなし

人生100年時代、より豊かな生活を送るためには「お金」と向き合うことが不可欠です。この特集ページでは、お金に関するさまざまな話題を取り上げ、「お金とわたし」をテーマにした著名人インタビューも随時掲載します。

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フォロワー47万人 元日経エース記者が語る「お金」「資産運用」

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インタビューに答える元日経新聞記者の後藤達也さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影
インタビューに答える元日経新聞記者の後藤達也さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影

 各界の著名人が語る「お金とわたし」。今回は、日本経済新聞社を2022年3月に退社し、フリーで活躍する後藤達也さん(42)です。SNS(ネット交流サービス)を駆使して経済ニュースを分かりやすく解説する後藤さんは、ツイッターのフォロワー数が47万人、ユーチューブのチャンネル登録者数が23万人もいる売れっ子ジャーナリスト。フリーになった理由や資産運用に対する考え方などを聞きました。【聞き手・坂根真理】

 ――日経ではエース記者として活躍されていましたが、なぜ退社したのですか。

 人生は100年時代だと言われています。私は42歳ですが、定年退職をする60歳まで「20年を切っているな」と思ったんです。70代でも元気に仕事をしている人っていますよね。もしかしたら、80歳を過ぎてもほどほどに仕事をしているかもしれない、となった時に、「60歳まで一つの組織にずっと残る」というのはリスクが高いと感じました。

 会社を辞めると安定した収入源を失うことになりますが、あえて外に出て、いろいろなことを試した方が、自分のスキルや世界が広がっていくような気がしました。

 ――「会社に残ることはリスクが高い」と判断したのですね。

 今はSNSが発達していて、どんな記事が読まれて、または読まれていないかが瞬時に分かります。特に「反応が悪い記事はどんな内容か」が大事だと思っていて。「これは1面にいくニュースだな」と思っても、ツイッター上の反応が乏しかったり、反対に「こんな話は新聞で大きな扱いにならない」と思うようなニュースに反響があったりします。

 ツイッターの反応が成功指標ではないですが、「新聞という箱のなかでの価値判断だけが全てではないな」と改めて気づかされたんです。ツイッター、ユーチューブなどいろんなことをやることで「世の中から求められるものが見えるのでは」と思いました。

「10年後に読まれても恥ずかしくない情報を発信したい」と語る後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影
「10年後に読まれても恥ずかしくない情報を発信したい」と語る後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影

 ――退社後の活動を振り返ってみてどうですか。

 大事にしているのは、長い目でみて多くの人に信頼してもらうことです。ユーチューブやテレビ番組の金融、資産形成の情報は「アテンションエコノミー」(その瞬間だけ目を引く内容)のものが多いです。5年に1回ぐらいの出来事を「100年に1回」ぐらいの出来事として紹介していたり。

 そんなことをやっていると、信頼を得られないと思うんです。下手に背伸びをして大げさに言ったり、「株が下がる」「今が株の買い時です」と断言したりするようなことはしません。

 「後藤はあの時もこの時も大げさに言っていない。普段、騒がない後藤が騒いでいるから、これはよほどのことなんだな」と思ってもらえるような存在でいたいです。そのためにも、5年後、10年後に読まれても恥ずかしくない情報を発信していきたいですね。

 ――円安が進み、物価も高くなっています。将来に不安を感じて投資を始める人も増えてきました。投資を始めたい人へのアドバイスを。

 おそらく、多くの人はこれまで投資に興味は無かったはずです。「経済のことはよく分からない」という人や、「何となく資産形成のために投資をやらないといけないとは思うけど、ものすごく勉強しないといけないのでは」と不安になっている人は多いのではないでしょうか。

 その観点でいうと、まずは「積み立てNISA(少額投資非課税制度)」を始めることを勧めます。積み立てNISAの投資信託に危ない商品はありません。余裕のある範囲で、コツコツとお金を積み立てていくのが現実的にできるアドバイスですね。

 もちろん、株価が下がったり、為替が動いたりして不安になる人はいると思いますが、マーケットは行ったり来たりするものですから一喜一憂しないことが大事です。

マーケットの動きに「一喜一憂しないことが大事です」と話す後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影
マーケットの動きに「一喜一憂しないことが大事です」と話す後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影

 あとは、もうけ話に乗らないことです。「元本保証をします。利回りも高いです」「100万円が1億円になりました」などの商品は詐欺の可能性があるので、よくチェックしてください。「そんな簡単にもうかるわけがない」と思っておいた方がいいです。

 より経済に関心が高い人は、米国や日本の企業の個別株を買ってみるのはどうでしょうか。もともと知っている企業の株を選んだり、企業のウェブサイトを見たりしながら「長い目で応援できそうだな」と思える企業の株を選んだりするといいと思います。企業の株価が上がったり下がったりする理由を分析すると、経済や世界情勢などへの関心の度合いや情報の感度が劇的に変わります。

 ――後藤さん自身の資産運用について教えてください。

 日経に在籍中はインサイダー取引の疑いをもたれないためにも、運用には一定の社内規則がありました。退職後も1年ほどは自身の運用について対外的に話すのを抑えようと思っています。

 そのうえで私自身の資産運用の基本的な考え方は特殊なものではありません。積み立てNISAなどの制度は活用し、日経平均株価などの株価指標に連動する「インデックス投資」が軸になると思います。米国主要500銘柄で構成する「S&P500」に連動した投資信託の商品に投資していくつもりです。長い目でみて円安が続く可能性があるので、海外の資産はある程度高めの比率で持っておく方が無難かと思っています。

 いくつか企業の個別株も買いたいとは思います。いろんな企業のことを知りたいですし。将来的には日本株や米国株を中心とした個別株で、長い目で投資していきたいものを探っていくつもりです。

 よく「今後の注目株は何ですか」と聞かれますが、将来有望な株の銘柄は何百もあって、その何百の企業をリサーチするなんて無理ですし、その手の質問にはお答えできません(笑い)。

「資産運用をすれば、社会に対する関心が高まる」という後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影
「資産運用をすれば、社会に対する関心が高まる」という後藤さん=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影

 ――円安が進み、物価が上昇している今こそ投資を始めるべきですか。

 そう思います。これまでは、銀行に預けるお金を増やすことが資産形成でした。銀行預金に黙って寝かせておけばよかった。金利はほとんど0%でも、物価も上がらないので、お金の価値は減りませんでした。

 でも、今年は円安が進み、インフレが起きて食料品などの物価が高騰しています。10年前の世界とは大きく変わってきているんです。「お金もうけ」ではなくて、「資産を守る」という観点からみたら、海外の通貨や株式を持っておくことが資産の防衛につながります。

 日本円の銀行預金で考えた場合、100万円の預金は銀行口座からなくなることはありません。でも、生活必需品の物価が上がっています。物価が10%上がれば、従来の約90万円分の物しか買えなくなります。100万円というお金がなくならなくても、実質的に100万円の価値は減ってしまうわけです。外貨や株式で運用していれば、円安やインフレが起こった時の保険のような役割を果たしてくれる可能性があります。

 資産運用をすれば、社会に対する関心が高まります。「収入が少ないので別の企業に転職した方がいいのかもしれない」「お金の収支バランスをどうしようか」など、仕事や資産形成についての意識も変わります。

 ――後藤さんにとっての「お金」とは。

 お金について話してきましたが、僕はお金には無頓着な人間です。金銭欲は全然高くなくて。70、80歳になった時に、やりがいのある仕事ができるかどうかが大事だと思っています。

 もちろん、資産が減るのは嫌ですけど、「資産を1億円にしたい」とかは全く思いません。高い車を乗り回したいとも思わないし、家賃が100万円の住宅に住んでもテンションは上がらないです。むしろ、自分が好きな仕事をして世の中に必要とされたり、感謝されたりすることの方に価値を置いています。

後藤さん自身は資産を増やすことに興味はなく、「好きな仕事をして世の中に必要とされたい」という=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影
後藤さん自身は資産を増やすことに興味はなく、「好きな仕事をして世の中に必要とされたい」という=東京都千代田区で2022年10月6日、長谷川直亮撮影

 お金は「潤滑油」みたいなものではないでしょうか。潤滑油がないと車は止まってしまいます。かといって、潤滑油は大量には要らないですよね。それよりも、エンジンや車輪の方が大事。お金は人生の潤滑油で最小限必要だけれども、血眼になって増やす必要はないと思うのです。

 世の中がどんどん変わっていく中で、いろんな人が頑張って仕事をしています。一生懸命に仕事をしながら、新しいことにチャレンジしている人と話すのが面白いし、それ自体が人生という物語の醍醐味(だいごみ)だと思っています。資産を増やすことに血眼になるのではなく、そうした人を取材できる醍醐味を味わいながら、豊かな時間を送っていきたいと思いますね。

 後藤達也さん

 日経記者としてニューヨーク特派員や日銀キャップなどを担当し、2022年3月に独立。ユーチューブやツイッターなどSNSを駆使して、経済ニュース、投資、資産運用などの情報発信を続けている。「経済ニュースを分かりやすく、おもしろく」がモットー。国民の金融リテラシーの向上に貢献することを目標としている。

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