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子宮移植の実施計画を、慶応大の研究チームが学内の倫理委員会に申請した。子宮のない女性の出産を可能にする医療だ。実施されれば国内初となる。
対象は、生まれつき子宮のない「ロキタンスキー症候群」の患者や、手術で子宮を摘出した人だ。20~30代が想定される。子宮を提供するのは母親など親族に限る。
海外で約100件の実施例があり、約50人の赤ちゃんが生まれた。国内では、日本医学会の検討委員会が昨年7月、条件付きで実施を容認する報告書をまとめた。
研究チームの担当者は「日本でも子宮のない女性の希望をかなえられる段階になった」と意義を強調する。
しかし、課題は多い。
まず医療面でのリスクが高いことだ。提供者から子宮を摘出する際、大量の出血を伴う。健康な人が臓器を失うことの精神的な影響も懸念される。
提供される人も、移植だけでなく、出産時の帝王切開、出産後の子宮摘出と、負担が大きい手術を続けて受けることになる。
妊娠中に、移植による拒絶反応を防ぐ強い免疫抑制剤を服用する場合、胎児に与える影響は十分には分かっていない。
倫理上の懸念も残る。国内で実施される臓器移植は、他に命を救う方法がない場合が原則だ。
生命維持に必須でない子宮移植のため、健康な人にメスを入れることは、倫理的に問題があるとの指摘も出ている。
申請を受けた慶応大の倫理委は、リスクや課題が多い医療であることを踏まえ、慎重に審査することが求められる。
実施が認められた際には、研究チームは、リスクの詳細を患者や家族へ丁寧に説明し、十分な理解を得る努力をすべきだ。
得られた知見は、プライバシーの保護に万全を期したうえで、第三者も検証できるように透明性を確保することが必要だ。
移植医療では提供者の自由意思が最優先されなければならない。心配されるのは、親族が提供を断りにくい立場に置かれることだ。
子宮移植が可能になったからといって、「女性は出産すべきだ」という価値観の押しつけにつながることは避けなければならない。