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やはり「数字ありき」だったと言うほかない。議論と説明を尽くしてこなかった岸田文雄首相の責任は重い。
首相は防衛、財務両省に対し、防衛費などの関連予算を2027年度に国内総生産(GDP)比で2%まで増やすよう指示した。
1976年に定められた「1%枠」は、80年代に撤廃された後も防衛費の目安となってきた。今年度当初予算は約5兆4000億円(0・96%)だ。2%なら倍増の約11兆円となる。
従来の防衛費に加え、安全保障関連の研究開発、インフラ整備、サイバー、国際協力などの経費も合算して達成するという。
だが、内容を詰め切らないまま規模を決めてしまうのは問題だ。
そもそもGDP比2%は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防費目標である。自民党は、7月に死去した安倍晋三元首相を中心に、日本もならうべきだと要求してきた。
ただ、地理的条件などから、必要となる防衛力は異なるはずだ。単純な比較は成り立たない。
岸田首相はこれまで、あらかじめ数値目標を設けることを避け、「内容、予算、財源を一体で決める」「必要なものを積み上げる」と繰り返していた。ところが、年末の予算編成を控える今になって突然、前言を翻した。
予算規模ばかりが先行するのは本末転倒だ。個々の項目の金額が必要以上に膨張するなどの弊害が出かねない。
防衛省の来年度概算要求は過去最大の約5兆6000億円で、金額を示さない事項要求が多数に上っている。
5年後の「2%目標」を見据えて、予算を積むことが優先されれば、装備品の優先順位や費用対効果、コスト削減などの観点も抜け落ちる懸念が高まる。
しかし、そうした点が精査されたようには見受けられない。
憲法に基づき、軍事大国とはならず、専守防衛を堅持することが日本の基本方針だ。規模の論理が先走れば、それとの整合性もおろそかになりかねない。
予算の倍増は防衛政策の大転換に直結する。国民の理解を得る努力を欠いたまま、なし崩しに決めることは許されない。