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「人間学の教科書」スラムダンク 映画は山王工戦を上回る?

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映画「THE FIRST SLAM DUNK」のバナー=©I.T.PLANNING,INC.©2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners
映画「THE FIRST SLAM DUNK」のバナー=©I.T.PLANNING,INC.©2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

 12月3日、26年前に連載が終了した井上雄彦氏による人気漫画「スラムダンク」の新作アニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」が公開される。井上氏と長年、交流があるスポーツドクターの辻秀一さん(61)は、不朽の名作とされるこの漫画を「人間学の教科書」と愛してやまない。あらすじが明かされていない映画については、漫画の最終盤で描かれたジャイアントキリング(大番狂わせ)を上回るドラマを期待している。【安藤龍朗】

「一生懸命」だけど「揺れる」

 スラムダンクについて、辻さんは「アスリートだけでなく、ビジネスの世界でも大切なメンタルマネジメントをわかりやすく表現しています」と熱く語る。

 「私たちが日常で求めているけれど、できないことってありますよね。例えば『一生懸命』。主人公の桜木花道は、一生懸命を楽しんでいます。その真っすぐな姿にまず、私たちは憧れを感じるんですね」

 桜木は元不良で、赤い髪がトレードマーク。高校入学後に出会ったバスケットボールに魅せられ、のめり込んでいく。辻さんは、桜木の成長ストーリーに加え、登場人物たちが放つ「引力」が、魅力的な物語を生み出しているとする。

 勝ちたい。結果を出したい。周囲の状況にとらわれる。アスリートにとって、煩悩はつきものだ。「登場人物たちも同じです。高校生は成熟しておらず、完璧ではありません。揺らぐ姿に、私たちは魅力を感じるのだと思います」

手作りレジュメが大ヒット

 辻さんは2000年、スラムダンクを題材にメンタルトレーニングの重要性を説いた著書「スラムダンク勝利学」を出版。重版が続き累計発行37万部となった。

 著書の原形は1991年ごろ、辻さんが慶応大学スポーツ医学研究センターに勤務していた時に作ったレジュメだ。当時、スポーツ界では今ほどメンタルトレーニングの重要性が語られていなかった。

 心を整える大切さを伝えようとしても、「怪しい宗教みたい」「そもそも根性がないのが問題だ。けしからん」と相手にされなかった。そこでひらめいたのがスラムダンクだ。90年から連載が始まった漫画はほとんどの学生が読んでおり、怪しまれずに手に取ってもらえると考えた。

 辻さんはバスケ部など体育会クラブの学生たちとグループワークを積み重ねた。

 例えば、「最高のチームとは何か」。主人公の桜木が所属する湘北高主将の赤木剛憲は全国高校総体、山王工戦でのタイムアウト時に「このチームは最高だ」と心の中でつぶやく。待ち望んだ「絶対王者」との対戦中に、赤木はチームメートの頼もしさを実感する。

 この名場面を切り貼りしたレジュメを元に学生たちが「最高のチーム」について話し合う。辻さんはスポーツ心理学の観点から、チームの理念を全員が理解したうえで、個性を生かすことの大切さなどを説いた。

 次第にレジュメは、他の東京六大学の学生たちにまでコピーが出回るようになった。「面識はなかったけど、そろそろ許可を取らないとだめだと思いました」。知人のつてをたどって井上氏に会うと、「ぜひ本にしてください」と言われたという。

色あせない物語 映画への期待

 スラムダンクが週刊少年ジャンプ(集英社)で「第一部完」というかたちで1996年に連載を終えてから、四半世紀が過ぎた。井上氏が紡ぐ物語の世界がどう映画で表現されるのか。

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