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被害の救済に資する新法としなければならない。国会は審議を尽くすべきだ。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受け、寄付の不当な働きかけを規制する法案が閣議決定された。
霊感と称して不安をあおるなど、相手を困惑させて、団体が寄付を募ることを禁止する。やめるよう国に命じられても従わなければ、刑事罰を科す。
不当な勧誘によって困惑した状態で寄付をした人は、事後に取り消せるようにする。
政府は先月、法案の概要を示していたが、「不十分だ」との声が上がっていた。新たに、寄付を働きかける際に配慮しなければならない項目が盛り込まれた。
「寄付をするかどうか適切に判断するのが難しい状態に陥らせない」「本人や家族の生活の維持を困難にさせない」「団体名を明らかにし、使途を誤認させない」の3点である。
しかし、依然として懸念は拭えない。追加項目は、あくまで配慮義務であり、内容も抽象的だ。
被害救済に取り組む弁護士団体は、禁止規定として位置づけるよう求めている。
岸田文雄首相は「配慮義務の規定により、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が容易になる」と強調している。
自分が困惑しているか認識できない状態で献金した人への対応を問われ、「その状態から脱した後に取り消し権を行使できる場合がある」と語った。
だが、献金の不当な働きかけに当たるかどうかを実際に判断するのは裁判所である。首相の説明通りになるかは分からない。
寄付したお金を本人に代わって家族が取り戻せる規定はあるが、行使できるケースは限られる。
立憲民主党は、そもそも法案によって禁止されている勧誘手段の範囲が限定的で、高額献金被害を防ぎきれないと指摘している。
新法の対象となるのは旧統一教会や宗教法人だけではない。NPOや政治団体などへの寄付にも関わってくる。
被害救済の実効性をどう高めるか。与野党で知恵を出し合い、国会審議を通じて、法案をより良いものに修正していく必要がある。