「どうか情報を…」問い続ける刑事司法制度 笹子トンネル事故10年

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
娘の遺影の前で妻の和代さん(手前左)と並び、追悼の言葉を述べる松本邦夫さん=山梨県大月市で2022年12月2日(代表撮影)
娘の遺影の前で妻の和代さん(手前左)と並び、追悼の言葉を述べる松本邦夫さん=山梨県大月市で2022年12月2日(代表撮影)

 2012年に9人が死亡した中央自動車道笹子トンネル(山梨県大月市)の天井板崩落事故は2日、発生から10年を迎えた。刑事事件の捜査や民事訴訟は終結したが、事故原因究明や再発防止のあり方に疑問を抱く遺族らは組織の刑事責任を直接問えるような制度を求め、他の事故遺族とも連携して活動を続けている。

 「事故の原因は明らかになっておらず、まだ解決していない」。森重之さん(当時27歳)の父和之さん(71)=茨城県=は2日の慰霊式で、トンネルを管理する中日本高速道路(名古屋市)にそう訴えた。石川友梨さん(当時28歳)の父信一さん(73)=神奈川県横須賀市=も、中日本高速や国土交通省の幹部に向かって「どうか情報をください。責める気はありません。私たちが死ぬ前に知りたい」と涙ながらに呼びかけた。

事故起こした会社に罰則ない

 事故原因を巡っては、遺族側が中日本高速などを相手取った民事訴訟で、横浜地裁が15年に「老朽化した設備の適切な点検を怠った」として会社側に賠償を命じた判決が確定している。しかし、遺族側は事故原因について会社側から踏み込んだ説明が得られていないと感じ、現行の司法制度にも一因があると考えるようになった。

 「事故のない社会を築くために、組織罰を問える制度を求め、できる限りのことに取り組む決意です」。松本玲さん(当時28歳)を失った父邦夫さん(71)=兵庫県芦屋市=は、妻の和代さん(71)とともに参列し、そう語った。

 夫妻は事故直後、刑法の業務上過失致死傷罪は個人が対象で、玲さんの命を奪った事故でも中日本高速など会社自体が処罰されることはない――と弁護士から知らされた。告訴状には当時の社長らの名前を書いて刑事責任追及を求めたが、巨大組織にいる幹部個人の責任を問う山梨県警の捜査は難航した。

JR福知山線脱線事故でも

 事故の約9カ月後、地元の兵庫県内で起きたJR福知山線脱線事故(05年)で、神戸地裁が業務上過失致死傷罪で強制起訴された歴代3社長を無罪としたというニュースが流れた。「私たちも同じ道のりを…

この記事は有料記事です。

残り689文字(全文1545文字)

あわせて読みたい

ニュース特集