連載

現代をみる

栗原俊雄専門記者(日本近現代史)によるコラム。

連載一覧

現代をみる

庶民の「安全保障」のために=栗原俊雄

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
米国などとの戦争で当時の日本政府は被害想定を十分に行わなかった。1945年3月の東京大空襲では10万人が死亡し、遺体を火葬場で焼くことができず、街中のあちこちで焼かれた。上野公園にある西郷隆盛の銅像近辺はその一つだ=東京都台東区で、栗原俊雄撮影
米国などとの戦争で当時の日本政府は被害想定を十分に行わなかった。1945年3月の東京大空襲では10万人が死亡し、遺体を火葬場で焼くことができず、街中のあちこちで焼かれた。上野公園にある西郷隆盛の銅像近辺はその一つだ=東京都台東区で、栗原俊雄撮影

 敗戦から77年、政府は新しい戦争への準備を進めているように見えてならない。大日本帝国時の戦争のように他国や他民族を侵略するためではないにせよ。岸田文雄首相は11月29日、防衛費などの関連予算を2倍近くに増やす方針を示した。

 日本は平時でも、地政学上特殊な環境にある。隣国であるロシアと中国、北朝鮮は核兵器を保有している。そして、長い間、いずれの国とも友好関係にはない。さらに最近は北朝鮮がミサイル発射を繰り返している。ロシアはウクライナに攻め込み、武力による国際秩序の破壊をためらわない姿勢を見せた。中国も膨張主義を隠さない。政府が安全保障体制の整備に力を入れるのは当然で、コストが増すのは必然である。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)が同月22日、岸田首相に提出した報告書は、安定財源確保のために増税を含めた国民全体の負担が必要、などとした。

 「日本はすでに軍事大国」という見方もあるが、お寒い状況もある。たとえば政府の全国瞬時警報システム(Jアラート)。武力攻撃や地震、津波など緊急時に避難を呼びかけるシステムだ。正確に働けば、被害をより少なくすることができるかもしれないが、現実はどうか。

この記事は有料記事です。

残り1410文字(全文1931文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集