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「宿題なし、テストなし」で学ぶ大切な力 工藤勇一校長の学校改革

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インタビューに答える横浜創英中学・高校の工藤勇一校長=横浜市神奈川区で2022年10月29日、前田梨里子撮影
インタビューに答える横浜創英中学・高校の工藤勇一校長=横浜市神奈川区で2022年10月29日、前田梨里子撮影

 今、子どもたちが身につけるべき力とは何なのか――。学校改革の旗手として知られる工藤勇一さん(横浜創英中学・高校校長)に聞いた。東京都千代田区立麴町中学で校長当時に宿題や定期テストを廃止した工藤さん。強調していたのは「誰一人置き去りにしない」教育現場のあり方だ。【聞き手・大沢瑞季】

学校の当たり前をやめた、その理由とは?

 ――これまで行ってきた学校改革について、改めて聞かせてください。なぜ、宿題を廃止したのでしょうか?

 ◆勉強は、「分からないものを分かるようにすること」が目的であって、「量をこなすこと」が目的ではありません。宿題を出すと、できる子は全部やるんです。でも、できない子は、分からないところを飛ばします。それでは成績は上がりません。

 宿題を出せば出すほど、子どもは提出することが目的になる。特に中3になると、内申書に影響するので、本当は理科を勉強したくても、国語の宿題が出ると、それをやってからじゃないと手がつけられない。総じて勉強時間は増えていきます。

 今、日本の労働生産性の低さが問題になっています。大人になって仕事をしていると分かると思うんですが、やるべき仕事がないのに、残業はしませんよね。やるべき時にやることが大事なはずです。

 でも、学校では何もやることがなくても、勉強する習慣が大事だと教えます。そうすると、言われたことをやり、時間だけ奪われて、学力は何も変わらない子が育ちます。

 社会に出れば、自分で勉強を続けないといけません。自分にあった学習方法を学校にいる間に身につけてもらうことは大事です。そうした意味からも、一律に課せられる宿題は、むしろ子どものためになりません。

 物事を変える時には、必ず批判が出ます。宿題を廃止した時、中3だけは喜びました。受験勉強ができるからです。

 でも、中1の親は「勉強しなくなりませんか」と不安がりました。私は「宿題は、分からないところをやるもの。分かるものと分からないものを切り分けて、分からないところを勉強する子は成績が伸びる。それを自分で学ぶことが大切なのです」と説明しました。

 同時に、中間・期末テストを廃止し、単元テストに変えました。単元テストは、再チャレンジできるようにしました。ただし、2回目を受けたら、1回目の点数は取り消されます。

 そうすると、子どもたちは絶対に2回目の点数を上げたいと思うので、1回目のテストで間違えたところを勉強します。分からなかったところを分かるようにするため、友達に聞いたり、先生に質問したりするようになりました。みんな成績が上がったんです。

行事の本当の目的は「全員が楽しむこと」

 ――運動会も変えたそうですね。

 ◆多くの学校では、運動会の目標に「団結」を掲げます。ですが、特性がある子も含めて、全ての子どもたちに強制すべきものなのか? 私はずっと疑問に思ってきました。

 クラス対抗で勝ち負けを競うため、ミスをすれば責められたり、負けたクラスは無力感に覆われたりします。

 でも、民主的に考えれば、競争したい人は競争すればいいし、競争したくない人は競争しなくていいはずです。それを全員に強制するのはおかしい。

 まず、名称を体育祭に変えました。「“祭り”だからね、君たちに全部あげる」。そう伝えて、種目や運営などは生徒に全てを委ねました。

 ただし、…

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