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日本がW杯決勝Tへ 新しい景色見せてほしい

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 欧州の強豪国を立て続けに破る快挙である。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本がドイツに続いてスペインからも逆転勝利を収め、決勝トーナメントに駒を進めた。

 日本が入った1次リーグE組は「死の組」と呼ばれるほど厳しい組み合わせのグループだった。

 世界ランキングではスペインが7位、ドイツが11位で、日本は24位だ。下馬評を覆し、優勝経験のある強豪2カ国から奪った白星は、日本のサッカー史にしっかりと刻まれるだろう。

 森保一(もりやすはじめ)監督も「世界最高峰のトップグループにいる国に勝てたということは、大きな自信につながる」と話し、勝利の重みを実感している様子だ。

 日本代表メンバーの多くは欧州のクラブに在籍し、常に世界レベルの環境に身を置いている。

 スペイン戦で同点ゴールを決めた堂安律(どうあんりつ)選手、決勝点を挙げた田中碧(あお)選手はともにドイツでプレーする。先発した久保建英(たけふさ)選手は10歳でスペインに渡り、早くから海外で経験を積んできた。

 そうして力を付けた選手たちを森保監督が流れに応じて巧みに入れ替え、相手の守りを崩すことに成功した。選手層の厚さに裏打ちされた戦術が逆転に結びついた。

 もちろん、長い歴史を誇る欧州のサッカーからまだまだ学ぶべき点は多い。だが、今大会を通じて、日本のレベルは着実に一段階上がったといえる。

 新型コロナウイルスの流行で、国内のスポーツ熱は冷めていた。昨年の東京オリンピック・パラリンピックも大半が無観客となるなど、多くの競技で応援が制限された。人々が熱狂を共有する瞬間は少なかった。

 サッカー人気も低迷し、W杯も開幕直前までは盛り上がりを欠いた。しかし、日本代表の活躍によって、スポーツの興奮がよみがえってきた。

 16強による決勝トーナメント進出は2大会連続4回目となる。1回戦の相手は前回準優勝で世界ランキング12位のクロアチアだ。

 「新しい景色」を合言葉に、日本代表は初のベスト8進出を目指している。その目標達成まであと1勝となった。歴史を塗り替える戦いを期待したい。

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