届いたのはサンゴの欠けらだけ 大叔父の手がかり求めDNA鑑定へ
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

78年前、日本から約4700キロ離れたパプアニューギニアで、27歳の青年が死んだ。名前は新井進さん。私の祖母の弟(大叔父)だ。家族に届いたのは遺骨の代わりとなるサンゴの欠けらだけ。でも、DNA解析の技術が進んで、進さんを捜すことができるかもしれない。私は進さんの足跡をたどる旅に出た。【國枝すみれ】
連載「進さんを捜して」第1部は全4回です。
このほかのラインアップは次の通りです。
第2回 生還率6%の部隊
第3回 ウルワ河ってどこ?
第4回 戦地で起きた本当のこと
父の死に「ああ、しまった」
厚生労働省には4月時点で1万1955柱の遺骨が身元不明のまま保管されている。進さんが死んだパプアニューギニアで収容された遺骨280柱も含まれている。
2021年10月、厚労省は戦没者の遺族がDNA鑑定を要求できる地域を大幅に拡大した。だから、おいである父のDNAを提出して照合してもらおうと思った。でも、今年2月、父が死んだ。悲しみと同時に「ああ、しまった」と思った。
厚労省に電話すると、「死者はDNAの検体提供者になれません」と言われる。そもそも焼骨してしまえば、細胞内のDNAは壊れてしまう。
進さんは独身で直系の子孫がいない。兄弟姉妹はもちろん、おいやめいは全員が他界していた。唯一生き残っている父の姉(89)は異母姉妹なので、進さんとは血がつながっていない。
万事休すだ。諦めきれず、出棺の前日、父の髪を切り取り、耳あかも綿棒で採取した。とりあえずDNAを保存しておこうと思ったのだ。我ながら未練がましい。
ふと思った。父親から男の子に遺伝するY染色体DNAを共有する親戚はもういないが、母系でつながるミトコンドリアDNAならどうだろう、と。進さんと同じミトコンドリアDNAを持っている人間なら存命だ。進さんのめいの子どもたち、つまり私のいとこだ。
とり…
この記事は有料記事です。
残り1952文字(全文2730文字)