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外国にルーツ 理由示さず身体検査、暴言 相次ぐ警察の「差別的」職務質問

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警察の人種差別的な職務質問に関する調査結果を発表する東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」の弁護士ら=2022年9月9日午後3時1分、井田純撮影
警察の人種差別的な職務質問に関する調査結果を発表する東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」の弁護士ら=2022年9月9日午後3時1分、井田純撮影

 警察庁は11月、人種や国籍などに基づいた「不適切・不用意」な職務質問などが2021年、全国で計6件あったと発表した。これに先立って9月に公表された東京弁護士会の調査では、「理由も示されずに身体検査された」「『国に帰れ』と怒鳴りつけられた」などの声が寄せられるなど、差別的な実態が明らかになっている。「見た目が違う」ということだけを理由に、警察官から不当な扱いを受けたとして裁判を起こすケースも相次いでいる。

 人種、皮膚の色や民族的出身を根拠に「犯罪活動に関与しているかどうかを判断」したり、「捜査活動の対象」としたりすることは、「レイシャルプロファイリング」と呼ばれて国際的にも問題となっており、国連人種差別撤廃委員会は20年、防止のためのガイドラインを策定するよう各国に勧告している。

 警察庁が「不適切・不用意」と認めたケースがあったのは、警視庁と宮城、神奈川、大阪の3府県警。日本人と黒人の両親を持つ20代の男性が、警官から「そういうドレッドヘア、おしゃれな方は薬物を持っていることが私の経験上多い」と言われ、所持品を調べられた事例などが含まれている。

 だが、「全国で年間6件などという程度のはずがない」というのが、外国人や海外にルーツを持つ住民の声だ。東京弁護士会が今年1~2月に実施した調査では、2094人の有効回答のうち、過去5年ほどの間に職務質問を受けた人は62・9%。自身の「身体的特徴」などから「外国ルーツを持つ人であることを警察官が認識して声をかけてきた」と答えた人は、このうち85・4%にのぼった。職務質問を受けた人のうち、76・9%が「外国人又(また)は外国にルーツを持つ人である」こと以外に警察官から声をかけられる理由はなかった、と考えていることも明らかになっている。

 「終始乱暴で失礼な態度で、いきなりズボンを脱がされ、下のものを見られた」「怪しいと思う人には声をかけるといわれたが、なぜ怪しいと思うかは教えてもらったことがない。(自分の)見かけ以外に怪しいと思うであろう理由が思いつかない」「日本で生まれ育ちましたが、『お前ら外国人は国に帰れや、外人に人権などない!国に帰れ!家族そろって国に帰れ!』と怒鳴り付けられました」など、明らかに差別的な事例が報告されている。

 昨年の「不適切・不用意」な事例を認めた警察庁は本紙の取材に対し「人種や国籍等への偏見に基づく差別的な意図は持っていない」と回答した。

 レイシャルプロファイリングを巡っては、昨年12月に米国大使館がツイッターを通じて日本滞在中の米国人に注意を呼びかけたこともあり、国会で3月に二之湯智・国家公安委員長(当時)がこの問題に関する調査を実施すると答弁した経緯がある。

 人種差別に関する啓発活動などを続けてきた「Japan for Black Lives」の川原直実さんは「アフリカ系のルーツを持つ知人の中には、中学生の時から職質されるようになった、という人もいます。自宅の目の前で、カギを持っていても、警官が納得してくれないという声もあります」と指摘する。

 警察庁は、先の調査結果を踏まえ、全国の警察幹部の会議で「人種、国籍等に対する偏見や差別との誤解を受けることのないよう、職務質問の際における不適切、不用意な言動を厳に慎むよう指導を徹底することを指示し、該当した都府県警察に対して個別に指導を行った」としている。

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