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かけがえのない子どもを預かっているという自覚はあったのか。常軌を逸した虐待行為と言うほかない。
静岡県裾野市の私立保育園に勤めていた元保育士3人が、園児に対する暴行の疑いで逮捕された。
園児の足をつかんで宙づりにしたり、頭を殴ったりした容疑である。被害に遭った1歳児は、抵抗することも、SOSを発することも難しい。
実態を調べた市によると、身体的虐待だけでなく、容姿をけなす言葉を浴びせたり、カッターナイフを見せて脅したりするなどの精神的虐待も行われていた。寝かしつけた園児に対し「ご臨終です」と発言したこともあった。
元保育士らは「しつけのつもりだった」と園に釈明したという。しかし、幼児への暴行は命にかかわりかねない。心に与えた傷が一生消えないこともある。なぜここまでエスカレートしたのか、徹底解明する必要がある。
園の責任も問われる。
事件は8月、市民による市への通報で発覚した。園長はその後、他の保育士らに口外しないよう求め、誓約書まで書かせていた。保護者への説明会を開いたのは、発覚から3カ月以上たってからだ。
市はきのう、犯人隠避の疑いで園長を刑事告発した。ただ、市が問題を公表したのは保護者説明会の翌日で、対応の遅れは明白だ。
今回のケースは氷山の一角とみられる。
富山市の認定こども園でも、保育士が園児を倉庫に閉じ込めるなどの行為を繰り返していたことが明らかになったばかりだ。近年、保育施設での虐待が各地で問題となっている。
厚生労働省の調査では、保育園における体罰などの不適切行為は2019年度、自治体が確認している分だけで345件に上った。
背景として指摘されるのは、子どもの人権に対する一部の保育士の意識の低さだ。慢性的な人手不足でストレスがたまりやすい職場環境も影響しているといわれる。
行政の指導やサポートが欠かせない。だが、未然防止のためのマニュアルを作成している自治体は少なく、対策は不十分だ。国と地方が連携して、保育の現場から虐待を根絶しなければならない。