大学入試「女子枠」は逆差別なのか 機会の平等について考える
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東京工業大が11月、2024年4月入学の入試から、「女子枠」を導入すると発表しました。SNS上では歓迎の声が上がる一方、「男性差別だ」といった反対意見も目立ちます。こうした女性やマイノリティーに対し、一定の優遇措置を取ることによって格差を是正する「アファーマティブ・アクション」(積極的差別是正措置)には反発が起きやすいと言われますが、どう向き合えばいいのでしょうか。【デジタル編集本部・牧野宏美】
「これを起点に波紋が広がり、社会全体に、真に多様性を受容する環境が育つことを期待します」
東工大は11月10日の発表で、「女子枠」導入の狙いをこう表現した。
東工大が「女子枠」を設けるのは総合型・学校推薦型選抜で、24年度から25年度の学部(東工大では学院と表記)の入試で計143人が対象になる。
現在、学部の女子学生の割合は約13%だが、導入によって20%以上になる見込みという。一方、募集定員の総数は変わらないため、学力検査中心の一般選抜の定員は現在の930人から801人へと100人以上減る。
背景にあるのは日本の理工学系の女子学生の少なさで、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最低レベルだ。文部科学省も理工学系の入試で女子学生を増やす工夫をするよう求めており、同様の動きは広がっている。23年度入試では名古屋大工学部などが「女子枠」を新設する。
一方で、こうした措置は不公平感や不満を招きやすい。九州大は12年度から理学部数学科で導入予定だったが、「男性差別だ」などの批判が起き、取りやめた。上野千鶴子・東大名誉教授は20年の毎日新聞の対談で、東大で是正措置の話をすると、「(実力がないのに)女子枠で入ったと言われるのが嫌」という理由で女性も反対すると明かしている。
公平性が期待される入試での是正措置については、大学側が趣旨や方法を丁寧に説明し、社会的合意を得ていくプロセスはもちろん必要だ。ただ、受験に至るまでの教育環境は男女平等なのか、という観点も見落としてはならないと思う。
「働き方の男女不平等 理論と実証分析」の著書がある山口一男・シカゴ大教授(社会学)によると、…
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