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連載「科学技術と人間」は今回、社会保障や環境、医療といった視点から現代社会を幅広く論じる広井良典・京大教授を迎えて、情報学者の西垣通さんが対談を行った。議論は人工知能(AI)を用いた未来予測から、持続可能な社会のあり方、人類史を踏まえた「情報」や「生命」をめぐる文明論的な課題へと展開した。【構成・大井浩一、写真・三浦研吾】
地域での人・モノ・金の循環が大事
西垣 広井さんが3年前に出版した「人口減少社会のデザイン」は、2050年の日本をAIによるシミュレーションで予測した日立製作所と京大の共同研究の成果ですが、私が好感を持ったのは単なる楽観論でも悲観論でもなく、きちんとAIの持つ能力を生かしながら、限界も示していることです。AIに関しては、AIを使えば景気が良くなる、AIは人間の知性を超えるといった断片的で危うい議論が専門家の間でも目立ちます。広井さんは未来シナリオとして、都市集中型から地方分散型に転換しないと日本社会は持たないと提言されていますね。
広井 AIの過大評価には、私も距離を置いた見方をしています。同時に、AIを未来の社会の構想に役立てることができるか、それをやってみればAIの可能性も限界も見えてくるのではないか、と考えて始めたのがその共同研究でした。「50年に日本は持続可能か」という課題について、人口や高齢化、国内総生産(GDP)といった約150の要因を抽出し、それらの因果連関モデルを作りました。そのうえで、約2万通りのシミュレーションをAIで分析した結果、日本社会の未来にとって東京一極集中に象徴される都市集中型か…
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