羽生結弦さんが3年前に残した“爪痕” トリノで目撃した「覚悟」思う
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新型コロナウイルスの感染拡大によって中止となっていたフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが8日、前回大会と同じイタリア・トリノで3年ぶりに幕を開ける。私は6日午後、現地に入り、まず会場のパラベラ競技場へ向かった。
地下鉄の最寄り駅から降りるとすぐ、特徴的な深紅の壁が見えてくる。午後4時前だというのに大きく傾いた日差しが、その壁を輝かせるように照らしていた。会場内は既に氷が張られ、スタッフが機材設営やスポンサーマークの設置作業を続けていた。
記者席に立った。改めて会場を見渡し、3年前へと思いをはせた。2019年12月6日、この場所で起きた出来事は忘れられないシーンの一つだったからだ。
◇
フィギュア担当となって初めての海外出張だった。注目は、もちろん男子の羽生結弦さん(28)。当時の焦点は、羽生さんが男女を通じて最多となるファイナルで5回目の優勝を果たすかどうかだった。
羽生さんからは、パラベラ競技場への特別な思い入れを感じた。19年12月4日、公式練習のリンクイン前に会場を見渡す姿があった。当時の取材メモを見返すと、練習後に次のように振り返っている。
「会場自体に大きなエネルギーがあるなと思っていて、自分がすごくスケートにのめり込んでいた時期のオリンピックがあった場所ということもあり、いろいろな思い出があります。もちろん記憶としての思い出もあるんですけど、記録としてここに残っているものは一生消えないと思っている」
06年トリノ五輪では、ここで女子の荒川静香さん(40)が日本フィギュア史上初の金メダルを手にした。以降、日本勢は22年北京冬季五輪までメダルが途切れたことがない。日本のフィギュア界においても転換点となった地だ。男子では羽生さんの尊敬するエフゲニー・プルシェンコさん(40)が悲願の五輪金メダルを獲得した。
羽生さんはコーチがトラブルで不在となり、独自調整という側面はあったが「ワクワクが止まらなくて」「憧れの中で滑っている感覚」と無邪気な笑顔を見せて会場の印象を語っていた。
しかし、5日のショートプログラム(SP)では三つ目の4回転トーループで着氷後に体勢を崩して連続ジャンプにつなげることができず、97・43点で2位発進。首位とは12・95点差だった。
◇
自身の誕生日である7日のフリーに向けてどう調整するか。逆転に向けたジャンプの構成はどうするのか。さまざまなことを想像しながら、6日の公式練習の場に足を運んだ。
羽生さんはトリノ入りしてから3日連続で跳んでいた4回転ルッツを、曲をかけた練習で4回転ループに続く2本目のジャンプとして跳んだ。17年10月のロシア杯以来、公式戦では組み込んでこなかったルッツを見て、4回転ジャンプ5本の構成で挑むことを予想した。練習の様子を記そうとノートパソコンを開いた。だが、すぐに閉じて再びメモをとることになる…
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