雇われのはずが親方? 健康被害の男性が補償額2倍を勝ち取るまで

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建設現場の作業者(記事と写真は直接関係ありません)=大阪市で、大島秀利撮影
建設現場の作業者(記事と写真は直接関係ありません)=大阪市で、大島秀利撮影

 工事現場で働く皆さん、加入している労災保険と働き方はマッチしていますか――。建設職場で吸ったアスベスト(石綿)により肺がんとなり労災認定された70歳代の男性が、国を相手に裁判を起こした。「雇われの労働者なのに、労働基準監督署から個人請負業者(一人親方)とみなされたため、補償が低額になった」として、労基署の判断の取り消しを求めているのだ。国側は裁判で一転「労働者だった」と認め、補償額を2倍に修正することを決定。裁判は終結する見通しとなった。

 取材を進めると、被災者の自己責任とされがちな建設現場の構造と、労基署が安易に一人親方の労災と決めつけ、調査に踏み込まない実態が浮かび上がった。

 労働者災害補償保険(労災保険)制度は国が会社から保険料を集めて運営。雇われた労働者が仕事上でけがや病気になって労災認定されると、治療費が無料になり、賃金の日額に応じた休業補償など手厚い補償がある。一方、一人親方などの個人請負業者の場合は、自分で任意の保険料を払って労災保険に「特別加入」していた場合に限り、労災認定により補償される仕組みになっている。

労基署が低補償額認定

 原告男性は三重県名張市在住。石綿含有のモルタルを塗るなど、建設下請け会社で左官工として働いたが…

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