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杉田政務官が発言撤回 反省するならけじめ必要

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 杉田水脈(みお)総務政務官が過去の差別的な発言の一部を撤回し、謝罪した。真摯(しんし)に反省するのであれば、けじめをつけるのが筋だ。

 撤回したのは、就任前の二つの発言である。

 2018年に月刊誌への寄稿で、性的少数者について「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり生産性がない」と記した。

 16年に国連女性差別撤廃委員会に出席した際「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」とブログに投稿した。

 性的少数者の尊厳を踏みにじり、朝鮮民族や先住民の伝統文化を侮蔑する発言である。

 松本剛明総務相は二つの発言について、傷つけた人におわびし、撤回するよう指示した。これを受けて杉田氏は先週の国会で「内閣の一員としてそれに従い、表現を取り消す」と答弁した。

 だが、その直前まで自分勝手な弁明を続け、撤回する意思を示していなかった。突如、転換したのは松本氏に言われたからで、自らの意思ではないように映る。

 杉田氏は日本維新の会公認で12年に初当選した。最近2回の衆院選は、安倍晋三元首相らの後押しで自民の比例単独候補として優遇された。

 政務官就任の記者会見で「過去に多様性を否定したことも、性的マイノリティーを差別したこともない」と言い張っていたが、問題発言は枚挙にいとまがない。

 14年には国会で「女性差別は存在していない」と発言した。先月、野党から問いただされると「命に関わるひどい女性差別は存在しないという趣旨だ」と弁明したが、詭弁(きべん)と言うほかない。

 一連の言動について「表現が拙かった」と繰り返すだけで、差別的な内容とは認めていない。

 国会議員としての適性すら疑われる発言を繰り返した杉田氏を、なぜ起用したのか。岸田文雄首相は「政務官としての能力を持った人物だと判断した」と説明する。だが、総務省はネット上の中傷対策を担う。その政務官として、ふさわしいとは思えない。

 「説明責任を果たしてもらう」と本人任せにしてはならない。差別的な言動には、首相自ら厳しい姿勢を示すべきだ。

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