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戦後日本は、憲法の平和主義を踏まえ、武器輸出に慎重な姿勢を取り続けてきた。そのルールを安易に緩和するようなことは許されない。
1967年以来維持されてきた「武器輸出三原則」は、安倍政権時代の2014年に「防衛装備移転三原則」へ改められた。輸出・提供先は安全保障上の協力国などに限られ、厳格な審査や適正な管理も求めている。
特に、殺傷能力のある武器については、国際共同開発への参加などに限定されている。
政府は、この三原則の運用指針の見直しを検討している。相手国の抑止力強化が日本の安全保障の改善に資すると判断した場合、武器輸出を認めるという。
共同開発した戦闘機などを第三国へ輸出する際の制約も緩和する可能性がある。
ロシアの侵攻が続くウクライナのように「国際法違反の侵略を受けた国」を、武器の提供対象に含める案も出ている。
政府案は、武器輸出の拡大に道を開くものだ。海外での紛争に日本が間接的に関与し、助長することになりかねない。
指針を変えることで三原則を骨抜きにし、従来の政策を大転換するのであれば、ごまかしと言うほかない。
指針が拡大解釈され、武器の輸出・提供が際限なく広がる懸念も拭えない。
政府は3月以降、ウクライナに対し、殺傷能力のない防弾チョッキなどを無償提供してきた。戦時下であるにもかかわらず、「紛争当事国ではない」と強引に解釈した。紛争当事国への提供を認めていない三原則と、つじつまを合わせた形だ。
日本を取り巻く安全保障環境が激変する一方、国内の防衛産業は縮小傾向にある。三原則の制約によって市場が広がらず、開発コストもかさむためだとされる。
政府は、輸出の条件を緩和することで産業の維持・成長を後押しし、周辺国との安保上の連携強化にもつなげたい考えだ。
だが、三原則は「海外の戦争に関与しない」という国家のあり方を示す重い規律である。国会での議論を尽くさずに変更するようなことがあってはならない。