アクセルとブレーキ、なぜ踏み間違う? 脳の「運動前野」に秘密
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高齢者の運転ミスによる事故が後を絶たない。中でも多いのが、ブレーキだと思ってアクセルを踏んでしまう「踏み間違い」だ。なぜわかっているのにミスをしてしまうのか。脳の「運動前野」という領域が、その謎に深く関わっていることがわかってきた。
公益財団法人・交通事故総合分析センター(東京都千代田区)のまとめによると、運転操作ミスによる対人事故のうち、踏み間違いは4割弱と最も多い。車両同士なども含めた踏み間違い事故は2018~20年に9738件発生。このうち死亡重傷事故は797件で、65歳以上が65%を占めた。
踏み間違いをしたドライバーは、赤信号や歩行者などの情報はちゃんと目で捉えているし、止まるという判断もしている。それにもかかわらず、ブレーキを踏むはずがアクセルを踏んでしまう。どこかにエラーが起きたのだ。
では、視覚情報から行動までに、脳内でどんな過程をたどるのか。
東京都医学総合研究所脳機能再建プロジェクトの中山義久主席研究員(神経科学)によると、目から入った視覚情報は脳に送られ、まず「側頭葉」でその物が何かを判別する。次に「前頭前野(ぜんとうぜんや)」で、物を認知して記憶する。
認知した内容から行動の目的を決め、必要な行為を選び、準備をするのが、次にある「運動前野」だ。そこから「運動野」に伝わり、手や足などを動かす指令が出るという流れだ。
研究者が注目するのが、目的から準備まで幅広い役割を担っている運動前野だ。1980年代に英国のチームがこんな実験をした。
サルをドアノブの前に座らせ、赤色が出たらノブを引く、青色が出たらノブを回す学習をさせた。成功率が9割ほどになった後、運動前野を切除した。すると、成功率は50%に低下し、当てずっぽうにやった結果と同じになった。運動前野は視覚情報と動作を結びつける重要な役割を果たしていたのだ。
ただし、運動前野のどこがどの役割を担っているかは、この実験だけではわからなかった。
そこで中山さんらのチームは、…
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