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防衛増税 岸田首相、裏目に出た先手 党内反発につじつま合わせ

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自民党税制調査会の会合で発言を終え、一礼して退席する松野博一官房長官(中央)。右は宮沢洋一会長=東京都千代田区の同党本部で2022年12月15日午前10時4分、竹内幹撮影
自民党税制調査会の会合で発言を終え、一礼して退席する松野博一官房長官(中央)。右は宮沢洋一会長=東京都千代田区の同党本部で2022年12月15日午前10時4分、竹内幹撮影

 防衛費増額の財源を巡る自民党内の協議は、激論の末に決着した。岸田文雄首相は早々に増税方針を示したことで党内の猛反発を招き、政権運営を巡る拙速さと調整不足が目立った。

官房長官、異例の税調出席

 「政府を代表して、ごあいさつする。5年間で強化する防衛力は裏付けとなる財源が不可欠だ。16日までに税制改正大綱をまとめていただくよう、なにとぞお願い申し上げる」。松野博一官房長官は15日、自民党の税制調査会役員会に出席し、防衛費増額に伴う増税を了承して与党税制改正大綱をとりまとめるよう要請した。

 「防衛力強化の内容と予算、財源を一体として年内に決める」と改めて強調し、首相が方針を示した1兆円強の増税案を後退させないようクギを刺した。党税調の会合に官房長官が出席することは異例だ。増税方針を貫けるか否かが、政権の命運をかける事態となったことを物語っていた。

 首相は、防衛力増強の内容と予算、財源を年内に「三位一体」で決着することにこだわってきた。だが、先の臨時国会は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受けた被害者救済法の議論が長引き、12月10日の会期末までもつれた。これも響き、安全保障の議論は想定より遅れた。自民内の一部には、防衛費増額の財源は当面は国債で賄い、「財源論は来年以降に先送りすべきだ」との声も強まっていた。

 危機感を持った首相は、11月28日、首相官邸に鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相を呼び、2027年度の防衛費と関連経費を現在の国内総生産(GDP)比2%とする方針とともに財源確保も年末までに「一体的に決定する」よう指示を出した。

 12月5日には23年度から5年間の防衛費の総額を「積み上げで約43兆円」と示したうえで、財源に「税制措置」を含むと言及し、増税方針を示唆した。8日には27年度以降の防衛力維持には毎年度約4兆円不足するとして、1兆円強の増税に関して、税目や施行時期などを検討するよう与党に要請した。政府関係者は「総額や不足する財源の数字がなかなか固まらない苦しさもあった」と振り返る。

 首相は先手を打ち、国債発行論をけん制する狙いだったが、党内議論の前に増税を打ち出したことは、裏目に出た。トップダウンで推し進めようとした首相に、「日程が厳しいのは分かるが、フライングだ」(自民若手)、「財源の話は国民の支持を得ながらやらなくてはいけない。政治はボタンを一つ一つ順序通り押すことが大事なのに」(自民関係者)と不満が噴出した。閣内からも高市早苗経済安全保障担当相や西村康稔経済産業相が異論を唱えた…

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