安倍派、なお渦巻く首相への不満 存在感維持「遺志」掲げ先鋭化
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

防衛費増額の財源を巡る自民党内の協議は、激論の末に決着した。首相がこだわった安定財源の確保に一定のめどはついたが、増税反対の急先鋒(せんぽう)となった安倍派の不満は依然くすぶり、党内にしこりを残した。
「ポスト安倍意識」党幹部冷ややか
自民内の防衛費増額の財源を巡る議論で、増税反対派の中心を占めたのは党内最大派閥の安倍派だった。前会長の安倍晋三元首相は「防衛国債」創設を提唱し、法人税減税を成長戦略の手段に位置付けていた。安倍派は、安倍氏死去後も派の存在感を保つため、遺志を継承しているとアピールする思惑があった。
「安倍派で主導してきた防衛力強化。これを実現するため結論を出していくことが大事だ」。党内協議が大詰めとなった15日、安倍派の塩谷立会長代理は派閥会合でそう強調した。
日本を取り巻く「安全保障環境の厳しさ」を説いてきた安倍氏の下、同派は「防衛力抜本強化」の主張を繰り返し、2023年度から5年間で「43兆円規模」の政府方針決定の推進力となった。
だが、増加分の財源確保策を巡っては、岸田首相との立場の違いを鮮明にした。「国民に一定の負担をお願いせざるを得ない」として増税を掲げた首相に対し、安倍派議員の多くが異論を唱えた。
安倍氏は生前、「防衛予算は次の世代に祖国を残す予算」として防衛費確保のための国債発行を提唱。また政府が財源の一つに見据えた法人税は、安倍政権が引き下げを繰り返し、アベノミクスの政策手段の柱だった。安倍氏のレガシー(政治的遺産)の否定とも受け取った派内からは「絶対にだめだ」(重鎮)と増税に反対する声が噴出した。
同派で安倍氏の側近だった萩生田光一政調会長が11日、訪問先の台湾で「国債償還ルールを見直して、償還費でまかなうことも検討に値する」と語り、増税以外の手段を求めたほか、世耕弘成参院幹事長らも慎重論を唱えた。
安倍派が先鋭化した背景には、…
この記事は有料記事です。
残り1737文字(全文2530文字)