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安倍元首相銃撃事件を機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に改めて注目が集まっています。

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日本は「無宗教」の先進国 個人尊重の仏と大きく違う政教分離

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伊達聖伸東京大教授=2022年12月1日、鈴木英生撮影
伊達聖伸東京大教授=2022年12月1日、鈴木英生撮影

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り、フランスの反セクト(カルト)法が話題だ。仏は、宗教と政治を厳格に分離する「ライシテ」体制でも知られる。その背景には、多文化共生や民主主義の問題にもつながる大切なポイントが垣間見える。ライシテを研究する伊達聖伸東京大教授は「日仏の政教分離を比較すると、日本の宗教を取り巻く状況の一端がわかる」と話す。【聞き手・鈴木英生】

公的空間で徹底して宗教を規制する仏

 ライシテとは何か。その理解は、立場によりさまざまで一概には言えない。単に政教分離の法的枠組みというだけでなく、フランス共和国の価値の根幹とまで言われ、ときには、すべての宗教の上に立つ、超越的な宗教のような姿で立ち現れることすらある。

 ライシテ体制は、米国などの政教分離より新しく、1905年の政教分離法で成立した。それまでは、国家がカトリックとプロテスタント、ユダヤ教だけを公認・管理して、聖職者の俸給を出していた。政教分離法は、国民の信教の自由を保障し、国家と宗教の分離を定めた。

 現代のライシテは、公的空間に「宗教的な標章または対象物」を置くことなども厳しく規制する。この原則が、公立学校でのイスラム教徒女性のスカーフないしはベール着用を禁止する法律などに表れている。裁判では、ベール着用を理由に民間託児所が従業員を解雇したことも合法とされた。他方、たとえばキリスト生誕の場面の模型は、一定の条件を満たせば伝統文化扱いされて公的施設に置ける。ライシテは、マイノリティーのイスラムに厳しく、元々多数派だったカトリックには甘く見える場合もある。

 なお、最近、「仏は学校で宗教をきちんと教えないから国民の知識が不足していて、カルトにひっかかる人が多い」といった指摘があるようだ。確かに宗教の科目はないが、歴史や哲学の授業で宗教事象を教えている。個人の信教や良心の自由の重要性などもきちんと教えており、この指摘は必ずしも当たらないかもしれない。

仏は個人、日米は団体の信教の自由守る

 公立学校でのベール禁止には、…

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【旧統一教会】

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